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日本快挙の理由に「武士道精神」? “ハラキリ”連発のE組突破で伊メディア「夢のよう」

中村大晃カルチョ・ライター
2022年12月1日、カタールW杯スペイン戦で同点弾を決めた堂安律(写真:ロイター/アフロ)

ジェットコースターのように目まぐるしく感情が揺さぶられる展開だった。

12月1日に行われたカタール・ワールドカップ(W杯)のグループE最終節では、後半に入ってグループステージ突破を巡る状況が何度も移り変わった。一時はスペインとドイツの両大国がそろって敗退する可能性もあったほどだ。

紆余曲折を経て、とはまさにこのことだろう。ドイツを相手に番狂わせを演じつつ、大敗直後のコスタリカに屈し、だがスペイン戦で再び逆転勝利とグループ首位通過を果たしたからだ。

イタリア紙『Gazzetta dello Sport』は、初戦で「ハラキリ・ドイツ」と報じた。コスタリカ戦では、「ハラキリ日本」になった。そして最終節、イタリアの『TUTTOmercatoWEB』は「ハラキリ・スペイン」と伝えている。どちらかのチームの自滅と評される試合がこれほど続いた例は、ほかにあるだろうか。

そんな激動を乗り越え、グループ首位で決勝トーナメント進出を決めたのが、森保一監督率いる日本だった。早い時間帯にスペインの先制点を許し、前半を支配されながら、後半に2-1と逆転勝利。展開だけで言えば、ドイツ戦をコピーしたかのような歴史的な白星となった。

実際、『Sport Mediaset』はレポート速報の見出しで「日本がまた快挙」と報じている。ドイツ戦に続く偉業は、あくまで「番狂わせの続き」だ。「日本が奇跡」という『Tuttosport』紙の見出しからも、同様のニュアンスがうかがえる。

前半の展開を考えれば、スペインとの差は歴然としていただけに、それも当然だろう。『Gazzetta dello Sport』はライブテキスト実況のなかで、ハーフタイムに「日本は今のところイエローカードをコレクションしただけ」と報じていたほどだ。

すべてを変えたのは、後半から出場した堂安律の一発だった。『Gazzetta dello Sport』は「すべてはドウアン投入を境に動いた」と報道。彼のプレーから逆転ゴールが生まれていることもあり、「弾みをもたらした」と伝えている。『Mediaset』も、堂安は「抑えることができない」選手だったと報じた。

だがもちろん、その堂安を起用した森保監督の手腕にも賛辞が寄せられている。『Gazzetta dello Sport』は、ハーフタイムの森保監督による采配で「ドイツ戦のデジャヴが始まった」と表現。『Mediaset』は「モリヤスの大きな功績だ。非常にうまく試合を読み、後半から試合と日本の運命を変えた2人を投入した」と伝えている。

ただ、スペインという強敵を倒すのに、強靭な精神力が不可欠なのも確かだ。だからだろうか、『Gazzetta dello Sport』は試合レポートの出だしをこう始めている。

「サムライの信念であるブシドー(武士道)の基本理念の2番目には、ユウ(勇)がある。日本はまたしてもこれ以上ないくらいにそれを尊重することができた」

ひいき目を差し引いても、日本がこのカタール大会というドラマにおける主役のひとりなのは間違いない。『calciomercato.com』は、この快挙を「夢のような日本」と伝えた。

森保ジャパンの夢はまだ続く。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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