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「親父と死ね」 不振のユヴェントス、ピルロ監督の17歳息子が誹謗中傷の被害に

中村大晃カルチョ・ライター
4月25日、セリエAフィオレンティーナ戦でのピルロ監督(写真:ロイター/アフロ)

愚か者がいなくなることはない――本当に、そうあきらめなければいけないのか。

4月26日、ユヴェントスを率いるアンドレア・ピルロ監督の息子が、インスタグラムで誹謗中傷の被害を訴えた。「親父と一緒に死ね」。17歳の青年に、そんな暴言メッセージが寄せられている。

監督未経験だったピルロに指揮を託した今季、セリエAで9連覇中の王者ユヴェントスは苦しんでいる。残り5試合で10連覇の可能性はほぼ消滅。早ければ次節で宿敵インテルに王座を明け渡すことになる。チャンピオンズリーグ(CL)でもベスト16敗退に終わった。

それだけではない。4位ユーヴェは来季のCL出場権を獲得できるかも微妙になりつつある。2位アタランタから6位ラツィオまで、わずか7ポイント差で5チームがひしめく熾烈なレースを、調子が下り坂のチームが勝ち抜ける保証はない。

悲願の欧州制覇を果たせず、国内での覇権を失い、さらにCLにも出られないとなれば、「失敗のシーズン」と叩かれるのは当然だ。当然、ピルロに対しても周囲の目が厳しくなっている。

だがそれは、息子を罵倒する理由になるのか。17歳の青年は、インスタグラムで悲痛な叫び声を上げた。以下、拙訳で恐縮だが、その訴えをご紹介する。

「僕はジャッジする人間ではない。したいとも思わない。誰にでも好きなことを言う権利がある。僕自身もまずそうしているし、誰にも言論の自由を奪われたくないと思っている」

「両親からは考えること、何より他人の話を聞くことを教わった。だが、何事にも限度があると思う。そしてすでに以前からその限度を越えている」

「僕は17歳で、日々こういうメッセージを受け取っている(ここに載せたのは先ほど届いたばかりの最後のやつだ)。その理由は、僕が何かしたからではなく、監督の息子だからというだけでしかない。おそらくは、その監督が好きではないのかもしれない。それは構わない」

「それが、毎日死ねというメッセージや様々な誹謗中傷が届く理由であり、僕の『罪』なのだろう」

「一瞬だけでいいから、僕の立場になって、どう感じるかを考えてもらいたい」

至極当然の怒りに、各界から誹謗中傷への非難や息子への激励の言葉が寄せられた。

ロベルタ・シノーポリ(ユーヴェOBクラウディオ・マルキージオの妻)

「恥ずべき愚か者たち!」

ファブリツィオ・ロマーノ(ジャーナリスト)

「恥ずべき。無知。それ以外の何物でもない」

マッテオ・サルヴィーニ(政治家、ミランファン)

「心からの連帯と抱擁を。サッカーはいずれにしてもゲーム。それでこのようなことになってはいけない。これらは『サポーター』じゃない。愚か者だ。賢明な君をたたえたい。これらのうっ憤を晴らすだけの者たちには処罰のみ」

シェイド(ラッパー)

「この人たちはユヴェントスファンでもサポーターでもなく、ただうっ憤を晴らしているだけだ。君のお父さんは魂を注いでいると思う。いくつかの不幸な結果に、誰より心を痛めていると思う。このような侮辱は、お父さんにも、ましてや君にはふさわしくない」

今季フィオレンティーナからユーヴェに移籍したフェデリコ・キエーザも、弟がSNSで誹謗中傷の被害に遭っている。ピッチでの結果と無関係な家族への暴言は、卑劣極まりない。

イングランドでは、人種差別への抗議として、クラブなどがソーシャルメディアでの活動を一時休止することを決めた。差別・誹謗中傷問題の解決への一歩となるのを願うばかりだ。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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