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トッティが声で起こした奇跡、激励メッセージで9カ月昏睡状態の女性が目覚め

中村大晃カルチョ・ライター
2019年12月6日、セリエAのインテル対ローマ戦でのトッティ(写真:ロイター/アフロ)

愛には、ときに奇跡を起こす力がある。

フランチェスコ・トッティは、その類まれな足技で、たびたび奇跡を起こしてきた。原動力となったのは、ローマや代表のユニフォームへの愛だ。

そのトッティが、今度は声で奇跡を起こした。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙や『コッリエレ・デッロ・スポルト』紙など、複数のイタリアメディアは9月24日、トッティの力で9カ月にわたり昏睡状態だった女性が目を覚ましたと報じている。

女性は、ラツィオの女子チーム選手だったイレーニア・マティッリさん。昨年12月の交通事故で同乗していた友人女性を亡くし、自身も昏睡状態に陥った。

イレーニアさんは、ラツィオの選手だが、ローマの大ファンでもあった。両親は時おり、眠る娘にローマのインノを聞かせていたそうだ。

ローマを愛する人にとって特別な存在といえばトッティだ。地元っ子でユース出身、16歳でデビューを飾り、数々の記録を打ち立てた。レアル・マドリーをはじめとする強豪からの誘いを断り、ローマへの愛を貫いてスパイクを脱いだレジェンドだ。イレーニアさんにとってもアイドルだった。

そのトッティが、イレーニアさんのために一肌脱いだ。周囲の協力もあって、イレーニアさんと両親の元に、トッティからのボイスメッセージが届いたのだ。

「イレーニア、あきらめるなよ。君はやれる。私たちみんなが一緒にいるよ」

短いメッセージだが、その言葉は、イレーニアさんを目覚めさせた。イレーニアさんのトッティへの愛と、トッティの自分を想う人への愛が、奇跡を起こしたのだ。

両親の感激は言うまでもない。

「イレーニアがずっとローマに抱いてきた情熱と愛情に、あなたの素晴らしい声が一緒になって、娘が目覚める助けとなりました。戻ってきた彼女の微笑みはたまらなく、それなしではいられません。彼女の目は光と喜びに満ちています」

今、トッティの声はイレーニアさんの生きる気力となっているはずだ。両親はトッティに、いつかイレーニアさんに面会してほしいと頼んでいる。

「親愛なるフランチェスコ、あなたを心から待っています。イレーニアがあなたを待っているのです」

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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