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御大サッキも「世界最強」と絶賛、ルカク&ラウタロ擁するインテルが未来に向けたEL決勝へ

中村大晃カルチョ・ライター
8月17日、EL準決勝シャフタール戦で得点を祝うルカクとラウタロ(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

インテルのファンは、期待している。10年ぶりの栄冠まで、あと一歩だ。

8月17日、インテルはヨーロッパリーグ(EL)準決勝でシャフタール・ドネツクに5-0と快勝し、決勝に駒を進めた。21日のファイナルに勝てば、2011年のコッパ・イタリア以来となるタイトルだ。欧州の舞台では、2010年のチャンピオンズリーグ(CL)優勝以来、10年ぶりの戴冠となる。

相手はUEFAカップ時代を含めて通算5回の優勝を誇り、大会名称が変わってから3連覇も成し遂げ、「ELマスター」とも言われるセビージャだ。それでも、インテリスタの自信と期待は大きい。チームが好調で、良いムードに包まれているからだ。

◆クラブ史有数のコンビ

ドイツでの再開以降、アントニオ・コンテ監督はレギュラーメンバーを固定しており、チームからは一体感がうかがえる。中でも、シーズンを通じてコンビネーションの良さが称賛されてきたのが、ロメル・ルカクとラウタロ・マルティネスの2トップだ。

シャフタール戦でも、ラウタロが前半の先制点を含むドッピエッタ(2得点)。そのラウタロからのアシストもあり、ルカクも終盤の固め打ちでドッピエッタを達成した。

ラウタロは今季21得点、ルカクは33得点。データサイト『Opta』によれば、そろって20得点をマークしたのは、インテルでは2004-05シーズンのアドリアーノ&オバフェミ・マルティンス以来だ。

チーム全体で今季通算111得点と、セリエAが1シーズン制となった1930年以降のクラブのシーズン得点記録を更新したインテルだが、そのうち48.6%をルカクとラウタロのコンビがマークしている。

『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙によれば、コンビで計54得点はクラブ歴代2位。今季の欧州トップリーグでは、バイエルン・ミュンヘンのロベルト・レバンドフスキとセルジュ・ニャブリに続く数字だ。

◆ファンも識者も監督も称賛

当然、賛辞には事欠かない。

アンドレア・ディ・カーロ記者が、『ガゼッタ』で「世界でも有数のコンビ」と話せば、ファブリツィオ・ボッカ記者は、『レプブッリカ』で「今、世界最強のコンビのひとつ」と記した。

マリオ・スコンチェルティ記者は、『TUTTOMercatoWEB』で「格、スピード、調和がある」とし、「世界最高のコンビでなければ、2番目」と称賛。さらにはアッリーゴ・サッキも、『ガゼッタ』のコラムで「おそらく今、世界最強のコンビ」と絶賛している。

欧州最強のコンビかを問う『ガゼッタ』電子版のアンケートでは、4800人超のユーザーのうち、約57%が「イエス」と回答した。

もちろん、身びいきは否めないが、ふたりのハーモニーが高く評価されているのは確かだ。それは指揮官も変わらない。決勝を2日後に控えた19日、UEFA公式サイトのインタビューで、コンテはルカクとラウタロのコンビについてこう話している。

「彼らには典型的なフォワードらしいセルフィッシュさがあるが、チームのためにプレーして味方の得点を助ける利他的なところもある」

◆怪物に並んで22年ぶり快挙も

ルカクとラウタロが互いを支え、チームをけん引してきたのは、開幕当初から変わらない。ルカクは序盤戦から元ブラジル代表の“怪物”ロナウドに並ぶペースでゴールを量産し、ラウタロは早い時間帯の得点でチームを波に乗らせていた。

シャフタール戦でも、ラウタロは前半19分にネットを揺らしている。『Opta』によると、30分以内での得点数は、レバンドフスキを抑えて5大リーグ最多だ。

一方、そのラウタロが一時不振に苦しんだときも支えたと言われるルカクは、今季33得点でロナウドの1年目の記録まであと1つに迫っている。

ロナウドが加入した1997-98シーズン、インテルはUEFAカップを制している。イタリアのチームはそれを最後にこの大会で優勝していない。ルカクがゴールを決め、インテルをEL制覇に導けば、まさにロナウドに並ぶ功績と言えるだろう。

◆国際タイトルは来季への糧に

その場合、ルカクにとっては初の国際タイトルとなるが、それはインテルの多くの選手にとって同じだ。ディエゴ・ゴディンやアレクシス・サンチェスを除き、国際舞台での優勝経験がない選手たちにとっては貴重な財産となる。

コンテも例外ではない。ユヴェントスやチェルシーで国内リーグを制覇し、イタリア代表では下馬評を覆してベスト8と奮闘したが、国際的な栄冠はコンテの「勝者のメンタリティー」をより一層強固なものとする。

それは、1カ月も経たないうちに新シーズンが開幕するセリエAでの覇権奪還に向けた大きな前進だ。わずか1ポイント差だったユヴェントスの王朝に終止符を打つ一歩となる。

EL決勝は、インテルにとって未来につながる大一番だ。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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