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インテルはポグバを獲得すべき? OBたちは「可能ならすぐに」「ラウタロ売るなら…」

中村大晃カルチョ・ライター
2019年12月、プレミアリーグのワトフォード戦でのポグバ(写真:ロイター/アフロ)

新型コロナウイルスの危機で、シーズンが再開されるかは未定だ。それでも、メルカート(移籍)の話題が尽きることはない。経済的打撃で先行き不透明でも、未来を見据えたチーム編成を計画しないわけにはいかないからだ。

5月3日、イタリア『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は、インテルのポール・ポグバに対する関心を報じた。仮に実現した場合、4年ぶりのイタリア復帰、アントニオ・コンテ監督とは6年ぶりの再会となる。

◆一長一短の大型取引

なぜ、インテルがポグバを狙うのか。記事を執筆したダヴィデ・ストッピーニ記者は、中盤に得点力のあるトップクラスの補強が必要と指摘する。指揮官が中盤に関して安心するには、冬のクリスティアン・エリクセン獲得では足りず、ステーファノ・センシとニコロ・バレッラでは不十分というのだ。

スティーブン・チャン会長は、王者ユヴェントスとの差を縮めるために大物の獲得を望んでいるという。ポグバとマンチェスター・ユナイテッドの契約が2021年までと残り1年なのも有利に働く。

加えて、レンタル中のマウロ・イカルディとイヴァン・ペリシッチが売却できれば、インテルは多額の資金を手にすることができる。ストッピーニ記者は、経済危機下において大きな後押しと伝えた。

一方で、高額サラリーがネックなのは間違いない。ロメル・ルカクやエリクセンらを上回るサラリーが、現在の経済情勢で現実的かは疑問符がつく。

ポグバ自身のパフォーマンスも気がかりだ。

4シーズンを過ごしたユヴェントスでは、公式戦178試合出場、34得点。復帰して4シーズン目のユナイテッドでは、ユーヴェ移籍前も含め、150試合出場で31得点。数字だけなら大きな違いはない。ただ、特に今季は負傷のために8試合出場にとどまっている。(数字は『Transfermarkt』より)。

何より、飛躍的な成長を遂げたユヴェントス時代や、ワールドカップ優勝に貢献したフランス代表での存在感を、ユナイテッド復帰以降のポグバは安定して見せていないとの声は少なくない。

ただ、すでにセリエAとコンテのシステムを知り尽くしていること、世界王者となった経験値、ルカクやアシュリー・ヤングといったユナイテッド元同僚の存在など、利点も多々あることは確かだ。

◆先輩たちの意見は様々

では、インテルはポグバを狙うべきなのか。『ガゼッタ』は4日、クラブOBたちに意見を求めた。ジュゼッペ・ベルゴミ、リッカルド・フェッリ、アルド・セレーナ、アレッサンドロ・アルトベッリの4名だ。

「その財力があるなら、すぐにやる必要がある」と、GOサインを出したのはベルゴミだ。適応に問題がなく、イタリアでは「支配的」になれるとし、コンテがベストを引き出すこともできると指摘した。

ベルゴミは「すぐに勝つための素晴らしい補強」になると賛同したうえで、「何かをあきらめる必要もあると想像する」とコメント。「長期的に何かを築くなら、サンドロ・トナーリやマヌエル・ロカテッリが完璧な投資」と、クラブの戦略次第と話している。

長期的に考えるなら、バルセロナ移籍が取りざたされるラウタロ・マルティネスの存在が重要だ。フェッリは「ポグバのためにラウタロを売るのはチームの向上にならないかも」と述べた。

「ポグバは、来てすぐに『ほらスクデット』と言わせるスターではない。独力で試合に勝ち、優勝するわけじゃない。それはリオネル・メッシだ」

フェッリは「健全で勝利を取り戻す意欲を持つ」と現在のクラブをたたえ、最善の戦略は層を厚くすることと指摘。「コンテがひとりだけの大物を狙うとは思わない。ポグバは偉大な選手だが、ひとりでトロフィーをもたらすわけじゃないのは、ユナイテッドでの歴史が示している」とつけ加えた。

セレーナも「ユーヴェ時代と比べてユナイテッドで成長が少し止まったのは事実」と指摘する。そのうえでレベルの高さを認め、キャリアの全盛期であることも強調。セレーナは「正しい監督を見つければ、まだ決定的になり得る。そしてコンテは正しい監督」と述べている。

ポグバが優勝のキーマンになるかは、「ユーヴェもハイレベルなメルカートをするだろうし分からない」。だが、コンテがインテルを飛躍させることは確実と「可能なら本当に良いビジネス」と評価した。

ただ、セレーナは高額サラリーへの懸念も示した。それはアルトベッリも同じだ。ポグバがユーヴェや代表の調子を取り戻し、コンテが必要と考えるなら、獲得はあり得るとの見方を示しつつ、「他選手の倍額なら、チームメートが彼のためだけにプレーするのを見るのは難しい」と指摘している。

◆新たな争奪戦になるのか

いずれにしても、これらはあくまで現時点でポグバを獲得すべきかの意見に過ぎない。冒頭で述べたように、今はあまりに不確実なことが多く、マーケットを巡る話題はいつも以上に慎重に受け止めるべきだ。ストッピーニ記者も「まだ誰もあえてその引き出しを開けようとはしない」と記した。

現在のイタリア・サッカー界をけん引するユヴェントスとインテルは、マーケットでもたびたびバトルしている。昨夏はルカクを競った。冬はデヤン・クルセフスキを争った。次はトナーリやフェデリコ・キエーザ、ガエターノ・カストロヴィッリとも言われている。

そのリストに、ユーヴェ復帰の噂が絶えないポグバも加わるのか。今は、進展を見守るしかない。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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