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街・歴史・現状・ライバル…吉田麻也が移籍したサンプドリアってどんなチーム?

中村大晃カルチョ・ライター
2019年10月、W杯アジア予選での吉田麻也。12人目の日本人セリエA選手に。(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

冬の移籍市場最終日の1月31日、日本代表DF吉田麻也がサウサンプトンからサンプドリアに移籍した。今季からボローニャでプレーする冨安健洋に続き、12人目の日本人セリエA選手誕生だ。

「ボロネーゼ」が有名なボローニャに続き、「ジェノヴェーゼ」で知られるジェノヴァの街を拠点とするサンプドリアに日本人が加わったのは面白い。ちなみに、今から16年前にも、ボローニャとサンプドリアの両クラブに日本人選手が在籍していた。中田英寿と、柳沢敦だ。偶然だが、興味深い。後者が出番を失い、直接対決することはなかったが。

サウサンプトンで出番を失い、復活を期す吉田が新たに選んだサンプドリアとは、どのようなクラブなのだろうか。

◆街

リグーリア州の州都であるジェノヴァは、イタリアの北西部に位置する。人口は約57万人。港町とあり、かつては海洋国家として栄えた。あのコロンブスの出身地とも言われる。

冨安がいるボローニャとの行き来には、早くて約3時間を要する。ただ、短期間の観戦旅行でも日程に組み込める街だ。イタリアの主要都市からは、ミラノなら列車で約1時間半、トリノなら約2時間。

同じジェノヴァの街を拠点とするのが、三浦知良も在籍したジェノア。サンプドリアとのダービーは「デルビー・デッラ・ランテルナ(灯台ダービー)」と呼ばれる。

◆UCサンプドリアのプロフィール

設立は1946年。1970年代終盤から80年代にかけてと、2000年代初頭にセリエB(2部)をさまよったが、大半はセリエAの中位を競うクラブだ。

1990年代にロベルト・マンチーニやジャンルカ・ヴィアッリといった有数のタレントを擁し、1991年に一度だけ優勝した経験を持つ。当時のチームは「サンプ・ドーロ(黄金のサンプ)」と称賛され、現在でもいわゆるビッグクラブ以外が優勝した過去例のひとつとして名前が出ることが少なくない。

2014年にマッシモ・フェレーロ現会長がクラブを買収。俳優経験もある映画プロデューサーだけに、ショーマンシップ精神が強く、インパクトのある風貌と発言で当初は旋風を巻き起こした。だが、最近はクラブ売却の報道が絶えなくなり、直近でついに会長自ら売りに出す考えを認めている。

本拠地は「ルイジ・フェラリス」。1911年にオープンし、1934年や1990年のワールドカップでも使用された。収容約3万7000人。「マラッシ」の愛称で知られ、イタリアには珍しいイングランド風のスタジアムとして人気を博す。

過去の所属選手では、前述のマンチーニやヴィアッリのほか、ルート・フリット、ヴィンチェンツォ・モンテッラ、アントニオ・カッサーノなど、名だたるアタッカーが在籍。中盤もフアン・セバスティアン・ベロン、クラレンス・セードルフといった大物たちが若かりし頃にプレーしている。ワルテル・ゼンガ、ジャンルカ・パリュウカといったイタリアを代表する守護神もいた。

現在ボローニャを率いるシニシャ・ミハイロビッチ監督も、現役時代にサンプドリアでプレー。指導者転身後に指揮も執った。

◆直近の成績と指揮官

現在のサンプドリアは、21節を消化したセリエAで勝ち点20の16位と苦しんでいる。

今季は3シーズン指揮を執ったマルコ・ジャンパオロが退任し、昨季途中までローマを率いたエウゼビオ・ディ・フランチェスコを招へい。だが、システムやコンセプトの変更が裏目に出て、開幕から3連敗スタートを切ると、7節までに1勝6敗と不振にあえぎ、早々の監督交代を余儀なくされた。

後任に選ばれたのが、昨季もシーズン途中の就任でローマを指揮した、立て直しに定評のあるクラウディオ・ラニエリ。レスター・シティでプレミアリーグ優勝の奇跡を起こした老将は、岡崎慎司やインテル時代に長友佑都を指導した経験もある。

ラニエリ体制になってから、サンプドリアはリーグの14試合で4勝5分け5敗。失点33はリーグのワースト6位タイという数字だが、うち16失点は前政権でのこと。監督交代後は14試合で17失点だ。

◆冬の補強やライバル

ただ、冬のマーケットで守備の改善が必要だったことは変わらない。インテルやバルセロナでプレーし、期待されていたジェイソン・ムリージョは、半年で再びスペイン移籍。定位置を手にしていたアレックス・フェラーリも、年末に前十字じん帯を負傷し、長期離脱を余儀なくされた。

それでも、ナポリから獲得したロレンツォ・トネッリに続くセンターバックの補強が吉田になったことには、事前に騒がれていなかっただけに、多くの地元メディアが「サプライズ」と驚きを示している。

『コッリエレ・デッラ・セーラ』の冬補強採点記事で、マリオ・スコンチェルティ記者はサンプドリアの補強にレギュラークラスはいないと指摘。『スポーツ・メディアセット』も「大ヒットとなるかも」と、あまり期待していない印象だ。なお、どちらもサンプドリアに5.5点と及第点を下回る評価を下している。

サンプドリアの全体的な補強については、『ガゼッタ・デッロ・スポルト』も5.5点の採点で「まだ岐路にあるシーズンにおいて、おそらくやや不十分」と指摘。『コッリエレ・デッロ・スポルト』は5点とさらに低く、「トネッリ以外の補強が必要だったのでは」と、吉田が存在しないかのように批判した。

いずれにしても、吉田は在籍2年目で不動のレギュラーであるオマール・コリーのパートナー役を、トネッリやフェラーリ離脱後にカバーしていたユリアン・シャボーと争うかたちだろうか。

サウサンプトンとの契約が最終年となっていた吉田は、今季末までのレンタルで加入した。ただ、現地メディアによれば、サンプドリアには来季以降のオプションもある様子。チームが残留を争っているだけに、実質4カ月の短い期間だが、今後につながるパフォーマンスが期待される。

まずは、3日の強豪ナポリ戦でデビューのチャンスを得られるか。ちなみに、ボローニャとの対戦は3月14日にマラッシで行われる予定だ。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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