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怪物級の得点ペースでインテルを背負うルカク、「運命を左右する」新大黒柱への期待

中村大晃カルチョ・ライター
10月29日、セリエA第10節ブレッシァ戦で決勝点をマークしたルカク(写真:ロイター/アフロ)

マウロ・イカルディが正式にパリへ向かうことになった時、その類まれな得点力を失うことに一抹の不安を覚えたインテルのサポーターもいたかもしれない。だが、少なくとも今のところ、それは杞憂に過ぎなかったと言えそうだ。

新たにインテル攻撃陣をけん引するロメル・ルカクが好調だ。11月2日のセリエA第11節ボローニャ戦では、終了間際のPKを含むドッピエッタ(1試合2得点)でチームを逆転勝利に導いた。これで4試合連続6得点と破竹の勢いだ。

◆歴代の大物ストライカーを上回る

アントニオ・コンテ監督が獲得を熱望したベルギー代表のストライカーは、ここまでセリエAの全試合に出場し、9得点をマークしている。イタリアメディアによると、加入して最初の11試合で9得点を挙げたのは、1997年の“怪物”ロナウド以来という。

2010年に歴史的な3冠を成し遂げた際の立役者ディエゴ・ミリートやサミュエル・エトーをはじめ、クリスティアン・ヴィエリやズラタン・イブラヒモビッチ、エルナン・クレスポ、そして前述のイカルディ…ルカクは名だたるゴールゲッターたちを上回るペースで得点を量産している。

ルカクがネットを揺らした7試合で、インテルは6勝1分け。特にここ3試合は、パルマ戦で同点弾、ブレッシァ戦とボローニャ戦では決勝点と、チームに勝ち点をもたらす貴重なゴールを決めてきた。その屈強な肉体で、ルカクはインテルを背負っているのだ。

◆「価格に見合う買い物」

ゴールだけではない。体躯を生かした献身的なポストプレーや、巨体に見合わぬスピードから繰り出すカウンターも、チームに欠かせない武器となっている。

マリオ・スコンチェルティ記者は、『calciomercato.com』で「インテルがプレーを始める時に最初に見る選手」と、ルカクのスタイルがイカルディよりもコンテの志向にフィットしていると分析。「インテルの運命に大きく影響する」と、非常に重要な存在と称賛した。

ファブリツィオ・ボッカ記者も、『レプッブリカ』で「高かったのは確かだ。だが、彼はその義務をすべて果たしている」と、高額な移籍金に見合う活躍と賛辞を寄せている。

“怪物”ロナウドは22年前、最終的にリーグ戦で25得点をマークした。当時はリーグが18チームだったため、ルカクにはそれ以上の数字も期待できるかもしれない。実現できれば、8連覇中の王者から覇権を奪い返すという偉業の達成も近づく。

インテルが最後までこのペースを保てるか問われると、スコンチェルティ記者は「そう思う。今のインテルは最後までいくはずだ。前線にバリエーションがやや欠けているが、ユヴェントスのほうが良いというわけじゃない」と答えた。

◆CL初得点への期待

ただ、直近で求められるのは、欧州最高峰の舞台での一発だ。バルセロナ戦を負傷で欠場したルカクは、CLの2試合でまだゴールを挙げていない

5日のグループステージ第4節でインテルはボルシア・ドルトムントと敵地で対戦する。勝ち点を手にすれば、決勝トーナメント進出を大きく引き寄せる大一番だ。シーズン前半戦でもっとも重要な一戦と位置づける声もある。ここで活躍できれば、「エース・ルカク」の立場はさらに盤石となる。

セリエAでルカクはアウェーでの6試合で7得点を挙げている。そして今回もアウェーでの試合だ。また、マンチェスター・ユナイテッド時代の2シーズンで、ルカクはCLの17試合に出場し、7得点をマークしている。プレー時間で見ると、200分ごとに1得点という数字だ。そして、『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は、ルカクが今季のCLで152分プレーしていると伝えた。つまり…

もちろん、サッカーは算数ではない。このデータだけで、熱狂的なサポーターの後押しを受けるドルトムントという「黄色い壁」を破れるとは言えないだろう。ただ、それだけの期待を抱かせるほど、ルカクの勢いはすさまじいということだ。

ルカクは「死の組」と言われる厳しいグループの突破につながるゴールを決める、あるいはそのお膳立てをすることができるだろうか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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