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名将アンチェロッティの苦境…危機的状況の不振ナポリ、「トップクラスでなくなる」?

中村大晃カルチョ・ライター
10月27日、セリエA第9節スパル戦でのアンチェロッティ。ここから3戦白星なし(写真:ロイター/アフロ)

チャンピオンズリーグ(CL)で王者リヴァプールを下し、その高揚感から優勝を期待する声すら上がったのは、わずか1ヵ月半前のことだ。欧州最高峰の舞台でグループ首位に立つナポリが、国内では近年ないほどに苦しんでいる。

◆近年まれな低調スタート

11月2日のセリエA第11節でローマに1-2と敗れたナポリは、勝ち点18で7位に転落した。首位ユヴェントスに勝ち点11差、2位インテルに同10差と大きく後れを取り、CLやヨーロッパリーグの出場圏からも外れている。

『ガゼッタ・デッロ・スポルト』によると、11節終了時で勝ち点18は、ワルテル・マッツァーリが率いていた2011-12シーズン(勝ち点16)以来の低調な数字。この時点でCL圏外だったのは、過去5年で初めてのことだ。

カルロ・アンチェロッティ体制が2年目を迎えた今季、ナポリは悲願の優勝に向けて手ごたえを感じていた。守備でリーグ屈指のDFコスタス・マノラス、前線にイルビング・ロサーノとフェルナンド・ジョレンテを獲得。マウリツィオ・サッリ時代からの土台に加え、層が厚くなった。

期待値が大きかっただけに、現状への批判は避けられない。マッシモ・マウロは、『レプッブリカ』で「多くのチャンスをつくっており、プレーは悪くない」としたうえで、「だが結果からは『危機』と定義し得る。バランスがない。攻める時は力強いが、攻められるとずっと失点の危険がある」と記した。

◆前任者との違いは明白

もはやナポリが「危機」にあるという主張は少なくない。ミンモ・マルフィターノ記者も、『ガゼッタ』で「危機は明白。明らかすぎて信じられなさが勝るほど」と指摘。「結果、クオリティー、継続性に欠ける」と批判している。

同じ『ガゼッタ』では、アンドレア・ディ・カーロ記者も、守備のもろさや90分間継続した戦いができないことを問題視。その失点の仕方や勝ち点の落とし方から、「サッリ時代の戦うハングリーさを失ったようだ」と嘆いた。

実際、アンチェロッティ体制のナポリは、サッリ政権のような結果を残せていない。『ガゼッタ』によると、サッリは114試合で79勝22分け13敗を記録し、1試合あたりの平均勝ち点は2.27ポイント。アンチェロッティは49試合で29勝10分け10敗、平均1.98ポイントだ。

『ガゼッタ』電子版のアンケートでは、6000人を超えるユーザーのうち、約43%が「ナポリの危機の責任」にアウレリオ・デ・ラウレンティス会長と回答。約32%がアンチェロッティ、約19%が選手、約6%がビデオアシスタントレフェリーと答えた。

◆手腕問われるカリスマ指揮官

アンチェロッティは開幕直後、「我々にはスクデットを目指して競うだけのクオリティーがある」と、優勝できるだけの戦力になったとツイートしていた。

だが、もはやスクデットは夢のままとなりつつある。稀代のカリスマ指揮官でも、手厳しい論評から逃れることはできない。

マルフィターノ記者は「アンチェロッティの不確実さが結果に響いている。このチームには自分のアイデンティティーがない。それは監督が与えられていないという意味」と批判している。

アレッサンドロ・バルバーノ記者も、『コッリエレ・デッロ・スポルト』で、時間が必要との理由から指揮官の選択を支持してきたが、「11節を終えてナポリが後退したことは確かな事実だ」と記した。

「アンチェロッティがその経験から何か発明しなければ、ナポリはもうトップクラスのチームではなくなるだろう」

『レプッブリカ』で現状を「明確な後退」と表現したファブリツィオ・ボッカ記者も、「アイデンティティーの明らかな危機に苦しんでおり、そこから抜け出すのは簡単ではないだろう」と綴っている。

ナポリは5日のCLグループステージ第4節で、南野拓実が所属するレッドブル・ザルツブルクと対戦する。勝てば決勝トーナメント進出がほぼ確実となる大事な試合だ。

3回のCL優勝を誇るアンチェロッティは、得意の欧州の地でナポリを立て直し、国内でも巻き返すことができるだろうか。

※11/5 9:00 本文3段落目「ラファエル・ベニテスが率いていた2011-12シーズン」を「ワルテル・マッツァーリが率いていた2011-12シーズン」に修正いたしました。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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