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ディバラは「理想的ないけにえ」? 背番号10の処遇が注目のユヴェントス

中村大晃カルチョ・ライター
3月17日、ジェノア戦でのディバラ。「ディバラ・マスク」は来季も見られるのか?(写真:ロイター/アフロ)

「クリスティアーノ・ロナウドは、コンタクトを持ったすべての人にさらなる何かを与えた」

5月1日付『ガゼッタ・デッロ・スポルト』のインタビューで、ユヴェントスのフェデリコ・ベルナルデスキは、今季から加入したスーパースターをこう称賛した。

確かに、C・ロナウドがもたらした物は大きいだろう。ただ、全員がその恩恵を受けたわけではない。例えば、絶対的スターの加入で存在感が薄まったのが、背番号10を纏うパウロ・ディバラだ。

◆無意識のうちにCR7に苦しんだ一年

加入から4年、今季はディバラにとって、ユーヴェに来てから最も厳しいシーズンだった。出場試合数や得点数の推移を見れば、一目瞭然だ。

筆者作成
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もちろん、得点数だけが貢献度に直結するわけではない。今季は与えられた役割がこれまでと違う。また、例えばチャンピオンズリーグ(CL)敗退が決まったアヤックス戦でも、フレンキー・デ・ヨングへのプレスで重要な役割を担っていたことは、ディバラが負傷で去った後半からも分かる。

それでも、創造性豊かな背番号10が、その力を存分に発揮できたシーズンでなかったことは確かだ。そして、そこにC・ロナウドが影響していることも否定できない。元イタリア代表のマルコ・タルデッリも、「無意識のうちに」C・ロナウドの存在に苦しんだと話している。

◆来季もチームの「顔」にはなれず

またしても届かなかった悲願の欧州制覇に再挑戦する来季、ユーヴェの「顔」となるのは、変わらずC・ロナウドだろう。ディバラ中心のチームづくりになることは想像しがたい。

『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙電子版が4月19日に実施したアンケートでも、「ディバラはユーヴェが未来を再建するための土台に適した人材か」との質問に、2700名超のユーザーのうち、52%と過半数が「ノー」と答えている。

時に周囲を驚かす選手起用を見せるマッシミリアーノ・アッレグリ監督が、C・ロナウドとディバラが共存しながらベストを発揮できるかたちを生み出せるかが注目される。だが、それができなければ、現実志向の指揮官が優先するのはC・ロナウドだろう。

その場合、ディバラは今季と同じ道をたどることになる。それは、25歳になった彼にとっても避けたいところだ。だからこそ、移籍の噂は後を絶たない。

◆売れば80億円超の利益?

それはまた、ディバラ売却が財政面でユーヴェの利点になるからでもある。この夏のイタリア王者は、収支バランスから一部の大物を売却すると言われているところだ。

スポーツ経済に精通する『Il Sole 24 Ore』紙のマルコ・ベッリナッツォ記者は、『コッリエレ・デッロ・スポルト』紙で「理想像はディバラかも」と、背番号10が“いけにえ”に最適との見解を示した。

ベッリナッツォ記者は、ディバラがすでに4シーズン在籍していることもあり、7500~8000万ユーロ(約93億8000万~100億円)で売却すれば、6500~7000万ユーロ(約81億3000万~87億6000万円)の利益になると指摘。クラブにとって、夏の補強費にもつながると述べた。

◆相思相愛の先にあるのは?

『ガゼッタ』は先月、ディバラが背番号10を引き継いだ際、「最低10年」はそのユニフォームを纏い続け、バンディエーラ(旗頭)になる考えだったと報じている。ファビオ・パラティチSDも、同紙のインタビューでディバラ残留を明言した。選手もクラブも、相思相愛ということだ。

甘いマスクで、クラブへの忠誠心にあふれるファンタジスタ。まるでアレッサンドロ・デル・ピエーロのようであり、ユヴェントスにとってこれほどの10番はそうそういない

それでも、サッカー界では何が起きるか分からない。一寸先は闇なのだ。先日リークされた来季のユニフォームもそのひとつ。ユヴェントスが伝統の縦縞を捨てるとは、誰が想像しただろう。

ディバラは先日、イタリアの月刊誌で「選手の人生はジェットコースターだ。ある日は最高でも、翌日には役立たずと言われる。バランスを取るのは簡単じゃない」と話している。

ユヴェントスとディバラにとって、最適のバランスはどこにあるのだろうか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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