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C・ロナウド効果でユヴェントスが「火星人」に? セリエ新記録ペースで「8連覇決定」とも

中村大晃カルチョ・ライター
11月24日、セリエA第13節スパル戦のC・ロナウド。16戦目で二桁得点達成(写真:ロイター/アフロ)

マンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラ監督は先日、バルセロナで勝ち点99を記録した2009-10シーズンに言及した際、勝ち点96で2位に終わったレアル・マドリーが素晴らしかったことが後押しになったと述べた。

だが、イタリアの絶対王者ユヴェントスは、下からの突き上げがなくても勝ち点を伸ばし続けている。13節を消化したセリエAで、12勝1分けのユーヴェは勝ち点37を記録。自らが2005-06シーズンに記録した36ポイントを上回り、過去最高の数字をたたき出している。

かつてないペースでポイントを積み重ねているのは、ライバルに追われているからではない。

11月25日、2位ナポリが最下位キエーヴォを相手にまさかのドローに終わったことで、首位を快走するユーヴェとの勝ち点差は8ポイントとなった。

『ガゼッタ・デッロ・スポルト』によると、13節終了時点で首位と2位の勝ち点差がこれだけ開いたのは、まだ18チーム制だった2000-01シーズン以来。中田英寿氏が所属していたローマが優勝したシーズンだ。13節終了時に首位だったローマは、2位ユーヴェと8ポイント差だった。

◆11月にして優勝争い終了との声も

中田氏の伝説のゴールなどでユーヴェとの天王山を引き分けたローマが、クラブ史上3度目のスクデットを獲得したように、シーズンが3分の1しか消化していない時点でこれだけ勝ち点差が開いていれば、首位が有利なのは言うまでもない。

必然的に、タイトルレース終了の声も上がってきた。『ガゼッタ』では、アレッサンドロ・デ・カロー記者が「おそらくリーグ戦はすでに終わった」と記し、解説者のマッシモ・マウロも『レプッブリカ』で「今季は終わった。ユーヴェがミスしても、ナポリとインテルはそれを生かせない」と断じている。

マウロが「どんなに楽観的な人でも競争がないと認めるはず」「セリエAはF1みたいになっている。誰も競争性をあまり気にしていない」と指摘するように、ユーヴェの1強ぶりは明白だ。数字だけではない。ルカ・ビアンキン記者は、『ガゼッタ』で戦力差の大きさを強調した。

「ユーヴェにはイタリア有数の守護神、最強のセンターバックコンビ、比類なき両サイドバック、ナンバーワンのプレーメーカー、最もバラエティーのある中盤グループ、そして両翼と2列目に重要なファンタジスタたちがいる。そしてそのすべてに、なかなかのアタッカーたちが加わるのだ。ディバラ、マンジュキッチ、そしてクリスティアーノ・ロナウドである。ゲームオーバーだ」

◆異星人ロナウドの加入で別次元に?

実際、C・ロナウドは守備の国イタリアでもゴールを量産し、その実力を見せつけている。

開幕から3試合ノーゴールだったのがウソのように、C・ロナウドはその後の10試合で9ゴールをマーク。データサイト『Opta』によれば、セリエA初年度に13試合で9得点を挙げたのは、ユーヴェでは1968-69シーズンのピエトロ・アナスタージ以来という。

C・ロナウドはチャンピオンズリーグ(CL)でもネットを揺らしており、公式戦16試合で10ゴールと、早くも二桁得点を達成した。『コッリエレ・デッロ・スポルト』によると、フィリッポ・インザーギ(18)、ゴンサロ・イグアイン(20)、カルロス・テベス(23)、ダビド・トレゼゲ(29)、ズラタン・イブラヒモビッチ(30)など、ユーヴェの歴史を彩ってきたストライカーたちを上回る早さでの達成だ。

「異星人」と言われることも少なくないC・ロナウドによって、圧倒的強さを誇っていたユーヴェは、さらに別次元へ引き上げられつつあるのかもしれない。

先日敗れたミランのジェンナーロ・ガットゥーゾ監督は、ユーヴェが「別の惑星」のチームだと述べた。デ・カロー記者も、ナポリやインテルをはじめとする他の強豪が「人間的」なのに対し、ユヴェントスは「火星人」と評している。

◆圧勝ゼロはイコール伸びしろか

ただ、OBのマウロは「矛盾しているのは、ユーヴェもそのポテンシャルを発揮できていないこと」と指摘している。その例として、24日のスパル戦で序盤は「プロヴィンチャのようだった」と記した。

アルベルト・チェルッティ記者も、『Calciomercato.com』で、今季のユーヴェがリーグ戦で3点差以上の勝利を収めていないことに言及している。

圧倒的な継続性で勝ち続けているが、「火星人」と呼ぶほどの爆発力に至っていないとの見方もできるということだ。だが、言い換えれば、改善の余地があるということ。寸分の隙も許さないマッシミリアーノ・アッレグリ監督は、クラブ悲願の欧州制覇に向け、その点に働きかけていくはずだ。

◆12月の5連戦次第で記録更新も?

そのCLで、ユーヴェは27日にバレンシアをホームに迎える。引き分け以上で決勝トーナメント進出が決まる一戦だ。そしてその後、リーグでは厳しい5連戦が待っている。

ビアンキン記者は、フィオレンティーナ(アウェー)、インテル(ホーム)、トリノダービー(アウェー)、ローマ(ホーム)、アタランタ(アウェー)との5試合で勝ち点12~13を挙げれば、ユーヴェが8連覇を確実にして正月を迎えるとの見解を示した。

そのときには、「シーズンが終わるころには、8ポイント差が半減するより、2倍・3倍になっている可能性のほうが高い」と述べたファブリツィオ・ボッカ記者の予想どおりとなるかもしれない。

現在のユーヴェは1試合平均で勝ち点2.84。このペースを維持した場合、アントニオ・コンテ時代の2013-14シーズンに記録した勝ち点102というクラブレコードを上回ることになる。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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