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イタリア代表復帰が噂のバロテッリ、アッズーリのOBたちはどう評価?

中村大晃カルチョ・ライター
2014年ブラジルW杯、イングランド戦でのマリオ・バロテッリ(写真:ロイター/アフロ)

ロシア・ワールドカップ開幕まで約1カ月となり、出場国では招集メンバーの選定が進められている。一方で、60年ぶりに本大会出場権を逃したサッカー大国は、まだ再生に向けたスタートすら切っていない。その第一歩となる新監督人事が、ようやくまとまりつつあるところだ。

スウェーデンとの予選プレーオフに敗れ、ロシアへの切符を逃したイタリアは、“戦犯”ジャンピエロ・ヴェントゥーラを切り、U-21代表のルイジ・ディ・ビアージョを暫定監督として3月の国際親善試合をこなしたうえで、新監督の選定を進めてきた。

連盟会長不在という異常な状況の中で動いてきたロベルト・ファッブリチーニ特別コミッショナーやアレッサンドロ・コスタクルタ副コミッショナーの本命は、カルロ・アンチェロッティだったと言われる。だが、合意に至らず、“次点”だったロベルト・マンチーニに新時代を託すことになりそうだ。

『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は8日、そのマンチーニ体制が見込まれるイタリア代表に、マリオ・バロテッリが復帰する可能性を報じた。周知のとおり、マンチーニがインテル時代に抜擢し、その後シティにも呼び寄せた愛弟子だ。

チェーザレ・プランデッリ時代にEURO2012で活躍したバロテッリだが、2大会連続グループステージ敗退に終わった2014年のブラジルW杯ではチームとの衝突も騒がれ、「問題児」のレッテルをはがせず。リヴァプールとミランでの鳴かず飛ばずの2年を経て、フランス・ニースで復活したものの、「悪童」のチームへの影響を懸念するヴェントゥーラからお呼びはかからなかった。

その間も時折SNSで代表への想いをうかがわせるなど、バロテッリのアッズーリへの愛情は有名だ。だが、度重なるトラブルで代表復帰に否定的な考えがあるのも否めない。なにしろ、最大の理解者と言われるマンチーニですら、バロテッリと衝突した過去があるのだから。

8月に28歳となるバロテッリを代表に呼び戻すことは、復権を目指すアッズーリにとって有益なのか。9日付の『ガゼッタ』が伝えたOBの見解は、その参考になるかもしれない。

元GKという立場から、バロテッリは「とても難しい対戦相手」と評したのは、ジャンルカ・パリュウカ。チーロ・インモービレやアンドレア・ベロッティのように、強いストライカーはほかにもいるとしつつ、バロテッリのような「技術的・肉体的クオリティー」のFWはいないと指摘し、「守備参加にも力を使うようになったらほぼ完璧なFW」とまで賛辞を寄せた。

肝心の精神面についても、パリュウカは「最後のお騒がせ行為を覚えていないことが、すでに良い兆し」とコメント。「誰しも歳を重ねるのだから、私は新たなバロテッリを信じる。ニースでの2年で成熟し、キレることが減り、何よりチームのプレーにより絡むようになった」と、太鼓判を押した。

インテル時代の先輩マルコ・マテラッツィも、「何よりもピッチでやっていることが代表のユニフォームにふさわしいから、(代表復帰は)うれしい」と後押し。バロテッリにとっては指揮官の信頼が重要とし、その点で「マンチーニにはアドバンテージがある」と期待を寄せた。

同じストライカー出身で、ユース時代に指導した経験もあるピエルルイジ・カジラギも、「信頼」が大事と指摘した一人。スウェーデン戦でイタリアに足りなかったシュートのパワーやキックも魅力とし、その「強烈な個性が現在の代表にとって貴重な要素になり得る」と述べている。

「すごく信頼している」と口にしたのが、マルコ・タルデッリ。バロテッリは「フィジカル、クオリティー、モビリティーをすべて兼ね備えている」とし、イタリアにこれほどのFWはいないと称賛した。ただし、「28歳になり、もうラストチャンスと分かるはず」ともコメント。「彼にとってのベストは、マンチーニの信頼を感じることではなく、常に改善を考えること」と、やはり本人の意識が大事だとも述べた。

かつて連盟副会長の立場で代表のバロテッリを見てきたデメトリオ・アルベルティーニも、「正しい意識なら素晴らしいことができる選手」と評価。「継続的にプレーしたいという本人の意欲」のほか、オフ・ザ・ボールや守備時の動きがポイントとしている。

OBたちのコメントからうかがえるのは、いつものバロテッリ評とも言える。「能力は確かだが精神面が問題であり、マネジメントが重要」というものだ。鍵を握るのは、やはり指揮官となる。アンドレア・ピルロは「管理が難しい? ルールと全員を整列させる監督で十分」と述べた。

マンチーニの就任とバロテッリの復帰が実現するかは、まだ分からない。確かなのは、アッズーリから遠ざかり、青色のユニフォームに飢えていたバロテッリに、残されているチャンスは多くないということだ。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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