Yahoo!ニュース

ブッフォンはラストW杯に出られるか…イタリア国民は批判的ながらも出場楽観?

中村大晃カルチョ・ライター
10月6日、W杯欧州予選マケドニア戦の試合前に国歌を歌うブッフォン(写真:ロイター/アフロ)

イタリア代表は10日、ロシア・ワールドカップ(W杯)欧州予選プレーオフのファーストレグに臨む。スウェーデンとの2試合は、15大会連続出場が懸かる大勝負だ。イタリアの人々は、代表チームがロシアへの切符を手に入れられると信じているのだろうか。

イタリア『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は11月9日、1000人を対象としたアンケートの結果を報じた。7日と8日にわたって行なわれたこの調査によると、ジャン・ピエロ・ヴェントゥーラ監督率いる代表チームの評価は芳しくない。それでも、国民は予選突破を信じているようだ。

◆突破を信じるも評価はせず

下馬評で有利とされているのはイタリアだ。4回の優勝を含む通算18回の出場経験に加え、最新のFIFAランキングでも15位とスウェーデン(25位)を上回っている。何より、スウェーデンはズラタン・イブラヒモビッチが代表から引退したのが大きい。

実際、アンケートでも11%が「大きな問題なくプレーオフ突破」と予想。「苦しむだろうが最後は突破」の69%と合わせ、回答者のじつに80%がイタリアのW杯出場を楽観視している。敗退を予想したのは、わずか9%だ。

2017年11月9日付ガゼッタ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成
2017年11月9日付ガゼッタ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成

だがこれは、現状への信頼ゆえの結果ではない。ヴェントゥーラ監督のチームに対する評価は、「失望させるプレーだから」の22%と「まだアイデンティティーを見出していないから」の18%を合わせ、回答者の40%がネガティブと答えている。ポジティブと評価したのは、「若手を重用するから」の14%と「良い結果を残しているから」の4%と合わせ、わずか18%。30%は「評価するには時間が必要」と、ポジティブでもネガティブでもないと回答した。

2017年11月9日付ガゼッタ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成
2017年11月9日付ガゼッタ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成

つまり、国民の多くはヴェントゥーラ監督の手腕をあまり評価していないということになる。それでも、今回のプレーオフにジョルジーニョ(ナポリ)、シモーネ・ザザ(バレンシア)とこれまで招集していなかった選手たちを呼び寄せたことは好意的に受け止められている。両選手が役立つかを問う質問に回答した72%のうち、ジョルジーニョは72%、ザザは70%が「イエス」を選んだ。

◆敗退したら…

選手たちからは「イタリアがいないW杯などW杯ではない」「出場できない可能性など考えもしなかった」と強気な主張も聞こえてくるが、2試合にすべてが懸かるプレーオフはリスクも小さくない。予選敗退という結果に終わった場合、国民はどうとらえるのだろうか。

アンケートでは、47%と半数近くが「大惨事」と回答した。28%が「イタリアサッカー全体を衰退させる」とし、19%が「巻き返しに向けた刺激になる」とみている。一方で、「スポーツにおける普通の出来事ですぐに忘れる」と冷めた回答を選択した国民は、45%にものぼった。

2017年11月9日付ガゼッタ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成
2017年11月9日付ガゼッタ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成

「大惨事」と回答した47%のうち、責任の所在が「選手のクオリティーの低さ」と答えたのは19%。ヴェントゥーラ監督(16%)、カルロ・タヴェッキオ連盟会長(10%)を非難する声も多くはなかった。問題視されたのは、「イタリアサッカー全体の動き」(46%)だ。

2017年11月9日付ガゼッタ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成
2017年11月9日付ガゼッタ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成

近年はリーグレベルでもスペインやイングランド、ドイツに押されていたイタリアだけに、問題は根深いと考える人も少なくないようだ。「ロシアW杯で3位以内に入るか」という質問でも、ドイツ(73%)、スペイン(63%)、ブラジル(48%)、アルゼンチン(33%)が多くの人から有力視されているのがうかがえる。ただし、イタリアも28%の回答者から“表彰台”に立てると予想された。

◆崖っぷちで強い?

当のイタリア人たちを含め、「イタリアは伝統的に崖っぷちで強さを発揮する」とみる人は多い。グループ2位で予選を通過し、1次リーグで1勝もできなかった1982年スペイン大会で優勝。グループステージで3位と苦しんだ1994年アメリカ大会も準優勝した。プレーオフを経て出場した1998年フランス大会でもベスト8に進み、2006年ドイツ大会では不正スキャンダル「カルチョーポリ」に揺れながらも世界王者となった。

ただ、近年はその「火事場の馬鹿力」にも陰りが見えていると言わざるを得ない。苦境を乗り越えられなくなっているのは、2大会連続グループステージ敗退という惨たんたる結果が示している。

◆ブッフォンの最後の舞台

守護神ジャンルイジ・ブッフォンは、所属のユヴェントスでチャンピオンズリーグを制覇した場合を除き、W杯をもって現役を引退すると宣言している。もしもロシアに行くことすらできなければ、ブッフォンは6大会参加という前人未到の記録を樹立することなく、グローブを脱ぐことになってしまう。

そのブッフォンが代表デビューを飾ったのは、1998年大会プレーオフのロシア戦だった。できればプレーオフを避けたかったというブッフォンは「大事なのは20年前と同じ結果にすること」とコメント。そのためには、採点で「7」がつくような良いプレーをしなければいけないと意気込んでいる。

イタリアは1970年メキシコ大会から3大会ごとに決勝を戦ってきた。2006年ドイツ大会で優勝した彼らは、2018年のロシアで再びファイナルの舞台を狙うためのスタートラインに立てるだろうか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

中村大晃の最近の記事