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賛辞の嵐でOBも優勝期待のナポリ、悲願成就に向けて真価が問われる10月

中村大晃カルチョ・ライター
9月20日、オリンピコでのラツィオ戦で逆転勝利したナポリの主力たち(写真:ロイター/アフロ)

現地時間10月1日、セリエA第7節で王者ユヴェントスがアタランタと敵地で2-2と引き分け、開幕7連勝を飾ったナポリが単独首位に立った。見事な成績で絶賛されているマウリツィオ・サッリ監督のチームは、1990年以来となる28年ぶりの優勝を成し遂げられるだろうか。

◆継続路線で輝かしい数字

夏にビッグクラブの多くが補強に大金を投じたのに対し、アウレリオ・デ・ラウレンティス会長が率いるナポリは継続路線を貫いた。耳目を集めるビッグネームを獲得しなかった代わりに、主力メンバーを全員残留させることに成功。「今年こそスクデット」を合言葉に、3年目を迎えたサッリ体制での悲願成就を目指すことを選んだ。

開幕から1カ月半、少なくともここまでは、この選択が功を奏している。昨季のラスト5試合と合わせ、リーグ戦で12連勝を記録。イタリア『ガゼッタ・デッロ・スポルト』によると、19試合連続無敗は前回優勝した1989-90シーズンに記録した18試合をも上回る。

特筆すべきは、武器の攻撃力だ。7試合で総得点25は、1957-58シーズンを上回るクラブレコード。11試合連続で3得点以上を記録している。それも、ドリース・メルテンス、ホセ・マリア・カジェホン、ロレンツォ・インシーニェの看板トリデンテだけではない。今季のナポリはすでに11選手が得点を挙げており、全体の底上げにも成功している。

前節カリアリ戦でその11番目に名を連ねたのが、大黒柱である主将マレク・ハムシクだ。これまで不調が取りざたされていたが、ゴールという結果を出したことで、数少ない懸念要素のひとつだったキャプテンの復調も期待される。

また、ゴールだけではない。イタリア『コッリエレ・デッロ・スポルト』のカウントでは、ナポリは7試合で139本のシュートを記録している。1試合平均にすると19.8本、約4分半ごとにシュートに持ち込んでいる計算だ。格下との試合も少なくなかったとはいえ、相手を圧倒しているのは明白だ。

もちろん、それだけのチームに仕上げてきたサッリ監督の評価は高い。チャンピオンズリーグ(CL)でマンチェスター・シティとの対戦を控えていることもあり、ナポリに賛辞を寄せたジョゼップ・グアルディオラ監督と比較する声も高まっている。『スカイ・スポーツ』の「どちらがより結果に影響しているか」とのアンケートでは、1万人を超えるユーザーの6割強がサッリに票を投じた。

◆OBの多くは楽観

アルカディウシュ・ミリクの長期離脱は想定外のトラブルだったが、それを除けば順風満帆のナポリだけに、後輩たちのタイトル獲得に期待するかつての優勝メンバーも少なくない。

レジェンドのディエゴ・マラドーナとともにスクデットを獲得したサルヴァトーレ・バンニ、ジュゼッペ・ブルスコロッティ、アンドレア・カルネヴァーレ、ブルーノ・ジョルダーノといった面々は、3日付『コッリエレ』で、それぞれナポリの優勝は可能と主張。ジョルダーノにいたっては「やれるじゃない。やらなきゃいけないだ」と鼓舞している。

マラドーナ、ジョルダーノと「MaGiCa(マジカ)」トリオを組んだもうひとり、元ブラジル代表のカレカも、『コッリエレ・デッラ・セーラ』で「まだ早すぎるが、私はスクデットを獲得できると思う」と、今シーズンこそ28年ぶりの快挙も可能との見解を示した。

◆10月を乗り越えられるか

ただ、サッリ監督は「6年前からタイトル候補と言われるが、常にユーヴェが勝っている」と、慎重な姿勢を崩していない。実際、やはりナポリでの優勝経験を持つOBのマッシモ・クリッパも、『ガゼッタ』で「優勝候補がユーヴェなのは変わらない」とコメント。連勝が止まったときの反応で、ナポリがスクデットを狙えるかが分かると指摘している。

実際、ラツィオを下してはいるものの、ナポリはまだユーヴェ、ローマ、インテルといった優勝候補たちと対戦していない。そのうち、ローマ、インテルとは今月対戦する。インターナショナルウィーク明けの次節とその翌節のビッグマッチ2連戦で、ナポリの真価が問われるかもしれない。

『スカイ』のマッテオ・マラーニ記者も「ナポリの首位は偶然じゃない」と称賛しつつも、「より本当の予想をするには、ローマ、インテルとの対戦を待ち、昨年のように10月がひどい月にならないことを願う必要があるだろう」と述べている。

思い起こせば、ナポリは昨季も開幕から6試合で4勝2分けと好発進しながら、10月に5試合で3敗を喫し、続く11月も1勝2分けと停滞したことでタイトルから遠ざかった。皮肉なことに、昨季のミリクの長期離脱も10月に起きた出来事だ。サッリ監督とチームは、1年前を教訓とし、OBたちの期待に応えられるだろうか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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