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CL決勝で消えたディバラは「超一流」なのか? メッシやC・ロナウドに近づくには…

中村大晃カルチョ・ライター
CL決勝で敗れ肩を落とすディバラ(写真:Maurizio Borsari/アフロ)

チャンピオンズリーグ(CL)決勝という大舞台で、パウロ・ディバラは消えていた。リオネル・メッシの後継者とも言われたユヴェントスの「宝石」は、クリスティアーノ・ロナウドの前に全く存在感を出せなかった。ディバラはメッシやC・ロナウドのような「超一流」の選手と呼べるのだろうか。

◆チームワーストの不出来

大会を通じて3失点と鉄壁の守備陣を誇っていたユーヴェは、レアル・マドリーに後半だけで3ゴールを許し、1-4と敗れ去った。前半は互角の出来で、むしろ上回っていたとの見方もあっただけに、イタリア王者の後半の崩壊ぶりに首をかしげた人も少なくないだろう。

ただ、前半から精彩を欠いた選手たちもいる。ユーヴェの攻撃を担うゴンサロ・イグアインとディバラのコンビは、愛称(HD)に見合う高いクオリティーを発揮できなかった。イグアインは大舞台に弱いというレッテルを今回もはがすことができなかった形だ。

そしてイグアイン以上に驚きだったのが、ディバラのパフォーマンスだ。2得点を挙げ、世界で絶賛されたバルセロナとの準々決勝ファーストレグが嘘みたいに、背番号21は何もできなかった。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』や『コッリエレ・デッロ・スポルト』では、チームワーストに選出されている。

◆今年24歳は「若い」のか

マッシミリアーノ・アッレグリ監督は前日会見で、精神的に成長したディバラが重圧に押しつぶされることはないと述べていた。だが、試合後は「初めてのCL決勝で精神的なプレッシャーがあった」とコメント。「まだ若い」と今年11月で24歳になるディバラを擁護している。

だが、24歳が必ずしも「若手」でないのがサッカー界だ。『コッリエレ』は5日付の記事で、サッカーの歴史に名を残したレジェンドたちが、24歳のときに数々のタイトルやバロンドールを獲得していたと報じている。例えばディエゴ・マラドーナは5つ、ヨハン・クライフは9つだ。

もちろん、すべてのレジェンドがこの若さで世界を圧倒していたわけではない。代表例がロベルト・バッジョだ。24歳時点で獲得した主要タイトルはゼロ。「イタリアの至宝」と呼ばれ、のちにバロンドーラーとなったバッジョが栄光を手にしたのは、ユヴェントスに移籍してからだった。

欧州上陸から3年間、ビッグクラブではないパレルモに在籍していたディバラも、花を開かせたのはユーヴェ加入以降のこと。ここ2シーズンは国内で2年連続2冠を果たし、2015年のスーペルコッパと加え、マラドーナと並ぶ5つのタイトルを手に入れている。

だが、“怪物”ロナウドとC・ロナウドは、24歳のときにバロンドールを含め12のトロフィーを手に入れている。メッシに至っては、バロンドール受賞3回を含む計18タイトルと圧倒的な数字だ。ディバラとの差は否めない。

◆規格外だが、火星人ではなし

ディバラはCL決勝だけでなく、ミランに敗れたスーペルコッパでも不発だった。『コッリエレ』は「ディバラはトッププレーヤーか?」という見出しで、同選手の評価を再考する記事を掲載。その中で、次のようにディバラを表している。

「フオリクラッセ(規格外)かという質問なら、我々の答えはイエスだ。メッシやC・ロナウドのような強い選手になるかという質問なら、我々の答えは『とても、とても難しい。不可能の手前』だ」

「C・ロナウドやメッシが引退するころ、ディバラはトップにいるだろう。だが、今は遠い。今はこの惑星のトップ5に入るが、あの2人は火星人なのだ」

◆ディバラに必要なのは…

では、ディバラが「火星人」になるためには、何が必要なのだろうか。『コッリエレ』はずばり、得点力と指摘した。C・ロナウドが今季46試合で42得点を挙げているのに対し、ディバラは48試合で19得点にとどまっている。

一方で興味深いのは、心理学者ダニエレ・ポポリツィオの指摘だ。同氏は「ディバラの問題はサッカーを楽しみすぎることだ」と分析した。

「相手がペスカーラだろうがマドリーだろうが、彼にとってはすべての試合が重要になる。心理的な観点で言うと、偉大なカンピオーネの振る舞いは違う。心身のエネルギーをコントロールし、全力を発揮すべきときに準備が整っているんだ」

もちろん、ポポリツィオが言いたいのは、メッシやC・ロナウドが一部の試合を重要視していないということではなく、あくまでも大舞台に向けてのマネジメントの重要性ということだろう。特に今季のC・ロナウドはジネディーヌ・ジダン監督によって休みを取り入れながらプレーしてきただけに、ポポリツィオの分析は一理あると言えるかもしれない。

いずれにしても、メッシやC・ロナウドに近づくには、ここぞという場面で結果を残さなければならない。元日本代表監督のジーコも、『コッリエレ・デッラ・セーラ』のインタビューで、若さと経験不足は否めないとしつつ、「彼の年齢ですでに足跡を残した王者たちもいる」「偉大なカンピオーネはビッグマッチで違いをつくらなければいけない」と、ディバラに厳しいメッセージを残している。

◆再出発への期待

だが、タイトルが懸かる一戦ではなかったものの、前述のバルセロナ戦もユーヴェにとって「大一番」と言える大事な試合だった。ディバラはそこで見事に結果を出している。今後もディバラがユーヴェの攻撃を支えていくことに変わりはないだろう。

ディバラ自身もSNSで「大きな落胆だが、僕らはこの悔しい敗戦から学ばなければいけない。より一層団結し、より自信を深め、ここからリスタートしよう。これまで以上に」と述べるなど、すでに前を向いているようだ。

アッレグリ監督やジャンルイジ・ブッフォンは、来季こそ欧州制覇を成し遂げたいと意気込みを表した。3年間で2度も泣いたイタリア王者と、初の決勝で屈辱を味わったディバラの来季に期待したい。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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