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新生ミランの「明」と「暗」 1勝1敗スタートでモンテッラ新体制の評価は?

中村大晃カルチョ・ライター
今季からミランで指揮を執るモンテッラ(imago/Buzzi)

本田圭佑所属のミランは、開幕戦で冷や汗をかきながら逃げ切り、第2節は2点ビハインドから追いついたものの、2人の退場者を出して敗れた。2試合で5得点6失点の勝ち点3という成績で、代表ウィークを迎えている。今季から指揮を執るヴィンチェンツォ・モンテッラ監督の手腕は、どう評価されているのだろうか。

3-2と勝利したトリノとの開幕戦は、カルロス・バッカがハットトリックを記録して有利に進めながら、終盤にガブリエル・パレッタが退場。17歳のジャンルイジ・ドンナルンマがPKを止めていなければ、負けに等しい勝ち点1に終わるところだった。

強豪ナポリとのアウェーゲームでは、前半に2失点しながら後半に追いついたが、勝ち越しを許した直後にユライ・クツカが審判への暴言で退場。さらにエムバイェ・ニアンも退場となって9人に陥り、アディショナルタイムにも失点して2-4と初黒星を喫している。

最年少のドンナルンマこそ奮闘しているが、やはり2試合で6失点の守備への批判は少なくない。

『スカイ・スポーツ』のミラン番記者、ペッペ・ディ・ステファノ記者は「守備は確実さがなく、もろくて軽い。1試合半で6失点していれば明白」と指摘。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』のマルコ・パソット記者も、2試合で3選手が退場というのは、「精神的な落ち着きを欠き、すっきりした頭でピッチに立てておらず、だからこそちょっとしたことで一線を越えてしまう」と苦言を呈している。

また、パソット記者は「混乱が恐怖につながり、まるで最後の砦かのようにゴール前に集まる」ところがあったとし、それは近年の結果から「再びミスを犯す恐怖と不確実さが顔を出してしまうから」だと分析。アメリカツアー中も相手のワンプレーで意気消沈してしまうことがあったと伝え、精神的なタフさが欠けていると指摘した。

一方で、攻撃面は高く評価されているようだ。

ディ・ステファノ記者は「バッカ、ニアン、スソの前線3人が監督の要求を理解しており、3選手とも納得のパフォーマンスでゴールを決めた」と評価。「やるべきことがたくさんあるのは事実」としつつ、「今回はミランが正しい道を進んでいるという印象だ」と、今後の躍進に期待を込めている。

パソット記者は先制されるまでのプレーも評価できるとし、「モンテッラが短期間で明白な痕跡を残せたのは、この夏最も喜ばしい知らせ」と称賛。敵地で強豪相手に苦境に陥ってもつなぐサッカーを貫こうとした姿勢や、「悲しいことに2点ビハインドになると消えてしまうチームだった」ミランが一度は追いつく気迫を見せたことにも賛辞を寄せた。

それでも、現在の戦力では限界があるとの見方は変わらないようだ。

指揮官が希望するレジスタの加入がなかったことで、パソット記者は中盤が「昨季と同じアキレス腱のまま」だと指摘している。だが、クラブ買収による中国資本の注入も、本格化するのは1月からと言われており、ディ・ステファノ記者は「それまでダメージを抑えつつ、気質などマーケットと無関係の側面を成長させるしかない」との見解を示した。

もちろん、あとわずかとなったマーケットで補強が実現する可能性もゼロではないが、正式に身売りが完了していない現時点のミランにそれだけの資金力がないのも事実。マーケット終盤に大型補強に動いたお隣のインテルとは状況が異なる。

もっとも、そのインテルも開幕から2試合白星なしと苦しい船出となった。『ガゼッタ』のコラムでのルイジ・ガルランド記者の文は、ミラノ勢が楽観できる状況にないことを示しているかもしれない。

「ミランにあるのは選手よりプレーで、インテルにあるのはプレーより選手。モンテッラに必要なのは金で、フランク・デ・ブールに必要なのは時間。そして、時間も金も、プレーも選手もあるユヴェントスには、すでに2チームを足してなお勝ち点2差をつけられている」

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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