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ポグバ、史上最高額での移籍にファンは何を思う? 募金を呼び掛けた作家は…

中村大晃カルチョ・ライター
ユヴェントスからの移籍が騒がれているポグバ(写真:aicfoto/アフロ)

ユヴェントスMFポール・ポグバが史上最高額で移籍――欧州メディアの報道どおりに実現すれば、イタリア王者にとっては大きな戦力ダウンだ。一方で、かつてない大金でクラブの金庫が潤うのも事実。23歳のフランス代表の売却を、サポーターはどう思っているのだろうか。かつて、ポグバ慰留のために募金も提案した作家は、選手にエールを送った。

◆天文学的数字の移籍が実現?

「ざっと計算したら、ポグバが1年で稼ぐ額を自分が稼ぐには、480年が必要だ」

イタリア『ガゼッタ・デッロ・スポルト』に寄せられた、あるユヴェントスファンのコメントだ。同紙は、マンチェスター・ユナイテッドに移籍した場合、ポグバの年俸は1200万ユーロ(約14億2000万円)と報じている。確かに、一般人には想像もできないサラリーだ。

移籍金は、さらに天文学的。メディアによって異なるが、おそらく1億ユーロ(約118億円)の大台を突破し、レアル・マドリーがガレス・ベイルを獲得した金額を上回る史上最高額とみられている。先日閉幕したEURO2016の大会途中、元イングランド代表のギャリー・リネカー氏が「ポグバは世界で最も過大評価されている選手では?」と疑問を投げかけたことは記憶に新しい。

◆残留を望むファンも、罵倒するサポーターも…

118億円に見合うかどうかの議論はさておき、ポグバがそれだけ重要な選手であることは確かだ。新シーズンのユヴェントスは、20年ぶり以上となるチャンピオンズリーグ(CL)優勝を本気で目指している。そのために、ミラレム・ピアニッチやダニエウ・アウベスも獲得した。それだけに、ポグバ離脱は大きな痛手であり、残留を呼び掛けるファンも多い。

また、ポグバは1年前に背番号を「10」に変更した。ミシェル・プラティニ、ロベルト・バッジョ、アレッサンドロ・デル・ピエーロ、カルロス・テベス…ユーヴェで歴史をつくり、ファンから愛された選手たちが纏った番号だ。その10番をわずか1年で脱ぎ去るとなれば、一部のファンから反発の声が上がるのは避けられないだろう。

◆気持ちよく送り出そうというユヴェントスファンの作家

一方で、前を向こうというファンもいる。1年半前、ポグバを残留させようと、ユヴェントスサポーターに2ユーロ(約236円)の募金を提案した作家のサンドロ・ヴェロネージ氏もその一人だ。

ヴェロネージ氏は『ガゼッタ』のコラムで、ポグバ退団は「痛ましくも深刻でもない」「裏切りと言えない」とし、「怪物ポグバを『つくった』という満足は、誰も奪い去ることができない」と記した。

また、「トリノでは愛、忍耐、誇りに包まれたが、あそこでそれは見つからないだろう」など、ポグバがイングランドで苦しむ可能性を指摘したうえで、ヴェロネージ氏はこう締めくくっている。

「だが、我々はみんな彼が好きだから、『頑張れ』という言葉でお別れしよう。白と黒のユニフォームで彼がやってきたことのすべて、そしてマンチェスターが再び彼を抱きしめるために考えつかなければならなかった条件に感謝しつつ。さあ、次はブッフォン、テュラム、ネドヴェドだ」

ユヴェントスはかつて、ジネディーヌ・ジダンをレアル・マドリーに売却し、その大金を元手にジャンルイジ・ブッフォン、リリアン・テュラム、パヴェル・ネドヴェドとクラブのレジェンドとなる大物を一気に獲得した。目指すはその再来というわけだ。

ヴェロネージ氏自身が1年半前の提案で、「売却して複数選手を獲得」戦略がヒットする保証はないとしていたことは、ご愛敬。愛するクラブに多くをもたらした選手を気持ちよく送り出すためだと、目をつぶろうではないか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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