【築地市場の豊洲移転】「日程より“納得”“安心”を優先」小池百合子都知事

視察での都職員とのやりとりは撮影ポイント以外「非公開」とされた 撮影:加藤順子

16日、東京都の小池百合子知事は、築地市場(中央区)と豊洲新市場(江東区)の施設を視察。移転を延期するかどうかの結論は先送りしたものの、「日程第一ではなく“納得”や“安心”」を優先させる意向を明らかにした。

11月7日に開場予定の豊洲新市場を巡っては、予定地が東京ガスの製造工場跡地だったことから、発がん性物質のベンゼンやシアンなどによる土壌や地下水の汚染が次々に表面化。いまも残存するベンゼンが新施設内の空気中でも検出されるなど、とくに働くことになる現場の市場関係者の不安は拭えていない。

施設内の空気中のベンゼンを調査

開場スケジュールも、東京五輪に間に合わせるための「環状2号線工事」が優先され、繁盛期の11月に設定されたことから、半数を超える319社の仲卸業者が延期を求める請願に署名。ここにきて、床積載荷重の不足や店舗の狭さといった設計の不備も指摘され、使い勝手面でも市場機能を果たせないことが問題視されている。

以下参照記事

汚染の残る豊洲新市場問題「ここで働くって、人体実験じゃないですか!」

【築地市場の豊洲移転問題】「11月移転は商人としてあるまじき」仲卸がアンケートに綴った延期を求める声

小池知事は、この日、都職員の説明を受けながら、築地市場を約30分、豊洲新市場を予定よりオーバーの1時間半以上かけて視察。その後のぶら下がりで、移転を延期するかどうかの結論は、リオからの帰国後に先送りしたうえで、新市場の事業費が「どうして5800億円に膨れ上がったのかも確認されなければいけない」ことを明らかにした。

また、小池知事の指示により、新市場施設内の全街区9ポイントで、空気中のベンゼンについて24時間にわたって調査を始めたこともわかった。

ぶら下がりでの知事と記者団との主なやりとりは、以下の通り。

モニタリング前に開場を決めた理由を聞きたい

Q:視察で感じられたこと

知事:市場の安全性の確認、使い勝手等、いろんなご要望も、関係業界の方々からも頂いていますし、ヒアリングも行いました。築地から豊洲への移転について、本日は自分の目で見て、どのような改善策があるのか、問題点はないのか、そのことを確かめに参りました。

手紙を渡そうとした仲卸はSPに阻まれたが、小池知事も窓を開けた 加藤順子撮影
手紙を渡そうとした仲卸はSPに阻まれたが、小池知事も窓を開けた 加藤順子撮影

Q:結論はいつ頃?

知事:早く出したい。リオから帰ってきて、そのうえで皆様方に結論をお伝えするスピード感でやらなければいけない

Q:11月7日の移転はベストだとお考えか?

知事:いまだ継続的に行ってきたモニタリングの調査が終わっていない。終わるのは、11月の最後、18日頃になると聞いている。まだモニタリングが終っていないのに、11月7日の日程を決めたのはどういう理由なのか、改めて確認したい

Q:モニタリングを待ってから移転という選択肢もあるのか?

知事:理由を確認したい

Q:リオからご帰国されてというと、早ければ8月中にも結論?

知事:これからも様々な手続きがございます。そのスケジュールなども踏まえながら、すべて進めなければならないという既に決まった日程を第一に考えるのではなく、日本の皆様方のご納得、安心を優先させていきたい。それによって日程も決まると思う

Q:(築地市場移転の理由とされている)環状2号線の建設を東京五輪に間に合えて急ぐ必然性はあるのか?

知事:それはまさしく総合的に考えていきたいと思っている

Q:慎重派の方々から要請書を受け取られたと思いますが、知事の頭の中に“延期”という2文字は入っていますでしょうか?

知事:総合的に考えます

Q:今日は、現場の仲卸の方の声はお聞きにならないのか?

知事:今日はですね、先日ヒアリングして頂いた方々と、途中でお手紙を頂戴した方々からは、文面で拝読させて頂きました。いろんな声がございます。しかし、決めていかなければいけないことが多々ございますので、そこはまさしく責任を持って、総合的に判断したいと考えております

Q:築地と豊洲をご覧になるにあたって、いちばん見たかった所は?

知事:まずは使い勝手です。移転賛成派も慎重派も共通して言っていて、改善も求められている。間口が狭い、マグロの解体ができない、トラックの出入り、ターレがヘアピンカーブを曲がれるのかなど、いろんな課題がある。これだけお金をかけていて、まだやらなければいけないことがあるというのは、途中でもっとヒアリングすべきだったということだと思う。これから改善すべきところなどをチェックしていきたい

Q:一部週刊誌で、豊洲新市場工事を巡って、内田(茂)都議が役員をしている企業が38億円で落札したという記事が出るようですが、築地市場の移転を巡る利権関係について、どのようにお考えか?

知事:それは、これから都政改革本部が始動いたしますので、都民の皆様のお金が正しく使われているのかという観点から、情報公開というところからもチェックさせて頂く

Q:建設費の予算が当初の990億円から2752億円になっていますが、そこについて都から具体的な説明はあったのでしょうか?

知事:これまで説明は受けております。五輪施設と同じように「資材が高騰した」「人件費が上がった」などの理由は共通しますが、いったいそれが、こんなに天井知らずに高くなっていいのか、非常に疑問に思っています。五輪と同じようにレガシーになればいいのですが、市場というのは、量販店、スーパー、通販などによって市場を通さない物品も増えてきている。この市場がサステイナブルであるかどうかというのは、これだけお金をかけて、また都民に負債を強いるわけにはいかないわけです。ですから、その辺のところは、根本問題も含め、業者の方々には使い勝手を良くするところは改善をして、そのうえで都民の皆様方には安心をして頂く。総合的判断と申し上げているのは、まさしくそれらを含んでのことです

仲卸が渡そうとした手紙には「移転すると死人が出る」の文字も…加藤順子撮影
仲卸が渡そうとした手紙には「移転すると死人が出る」の文字も…加藤順子撮影

Q:豊洲地区は現在、土壌汚染対策法上の「汚染区域」になっていて、“安全宣言”するには「汚染区域」を解除しなければいけない。その辺はどのようにお考えか?

知事:先ほどモニタリングのお話もさせて頂いたが、都民の皆様も納得できると、まず私自身が納得できるということが必要だと思っています。よって、さらに様々な調査、今日も(施設の)室内の空気についてベンゼンをチェックしている。それらの情報を確認したうえで、目安としてリオから戻ってきたタイミングで、総合的な判断の結論を出していきたい

Q:300区画が未調査であることについて、“安全宣言”を出すにあたって、調査がきちんとされないままでは、都民が安心して、ここから出される食べ物を口にすることはできないと思うが?

知事:調査の方法については、これまで都のほうでも、どういう調査が必要かということを精査して行ってきた。そのうえで様々な調査、追加の調査も依頼をしているところですので、その結果などを見て総合的に判断したい

都の隠してきたツケが明るみに

このように、小池知事は、2年間の地下水モニタリングが終っていないのに、11月7日の開場を決めた手順を問題視している。

土壌汚染対策法(土対法)によれば、対策工事後に地下水モニタリングを2年間行って、汚染が除去されたことを確認できなければ、“安全宣言”の前提ともなる土対法上の「汚染区域」の指定が解除されないからだ。

豊洲新市場予定地では、土壌汚染対策工事が終わった2年前の11月から土対法上の地下水モニタリングがスタートしたため、「汚染区域」の指定が解除できるのは、11月下旬以降となる。

実は、筆者は、2014年11月27日、都が「提言に基づいた全ての土壌汚染対策工事が確実に完了した」と発表した「第18回技術会議」の終了後、都の担当課長に、こう確認していた。

筆者:2年間のモニタリングの結果を得ないで新市場を開場することもあり得るのでしょうか?

担当課長:開場時期については今、業界の方々と調整させて頂いています

筆者:(モニタリングの結果を得ないで新市場を開場する)可能性があるということですか?

担当課長:まだ調整させて頂いているところなので……

参照記事【築地移転問題】新市場予定地の対策工事完了発表で、汚染の指定区域解除の話はどこへ行ったのか?

そして、都が11月上旬に開場することを正式に発表した同年12月17日の「新市場建設協議会」でも、都の担当課長に何度も尋ねてみたが、「開場時期とモニタリングは、基本的にはリンクしないものだと思っています」という根拠のよくわからない見解を繰り返した。

しかも、モニタリング中に汚染が見つかった場合、除去した後、またそこから新たに2年間のモニタリングが必要になる。

しかし、当時の担当課長は、こう苦しそうに説明していた。

「基本的には出ないものだと思っている。スケジュールに関係あるかないかは、出てみないとわからない。いまの段階では粛々と進めていく」

参照記事【築地移転問題】五輪優先で食の安全は軽視?豊洲新市場は「汚染区域」のまま2016年11月上旬に開場か

土対法を管轄する環境省によると、汚染の除去が終わったときから2年間のモニタリングを行い、結果は事業者が都道府県に報告する。その内容を確認して、区域の事由がなくなったとなれば、知事が解除をすることになるという。

「なぜ、市場開場の後に、モニタリングの結果が出るのか?」

さすがに環境大臣を経験しているだけあって、小池知事はこういう都の「その場しのぎの対応」にこだわっていたのだ。

これまでの都の閉鎖的な体質を垣間見るような象徴的なシーンがあった。

知事のぶら下がり後、記者たちが「開場後にモニタリングの結果が出るという事実関係を説明してほしい」などと都の担当課長を囲んで詰め寄っていた。しかし、

「すみません、私はちょっと…」「会場の関係もあるので、この辺で…」

「じゃあ、誰に聞けばいいんですか?」

などのやりとりの後、記者たちを制した別の職員に促され、担当課長が逃げるように会場から立ち去っていく。

結論を決めるにあたって、現場の当事者の意向を丁寧に聞くこともなく、これまでどれだけ密室で行われてきたのだろう。こうして都の隠してきたツケが、開場3カ月前の今頃になって噴き出してきたということなのではないか。