熊本でも…被災地での性暴力「デマではなかった」実態を支援者らが報告

中野さんは「被災地の性暴力を防ぐために平時からなくしていく取り組みが大事」と話す

熊本地震から1ヵ月。「被災地で性暴力の発生するリスクについて考えよう」というイベントが5月14日、都内で開催された。

主催したのは、性暴力ゼロの世界を目指して活動するNPO法人『しあわせなみだ』(中野宏美代表)。中野さんによれば、性暴力は、レイプだけではない。例えば、性虐待、痴漢、DV、ストーカー、セクハラ、望まない性産業に従事させられる人身売買など、幅広く存在しているという。

今回の熊本地震の被災地でも、「車に引っ張り込まれそうになった」「ガスの検針と装って家に上がろうとした」など、平時でも起きているような性犯罪の報告が寄せられているそうだ。

阪神・淡路大震災のときは、3~5年くらい経って「実は性暴力があった」と、女性たちの間で語られるようになった。そうした教訓を受けて、東日本大震災の際には同団体なども「被災地では性暴力が起こるリスクが高まる」と発信した。

この日、登壇者のNPO法人「子どもすこやかサポートネット」代表理事の田沢茂之さんは、「暴力が起こる構造」について、「ストレスが高いところで暴力の発生リスクが高まる。感情をため込んでいくと、そういう状況になる」などと警鐘を鳴らした。

株式会社「ソフィア研究所」シニア・コンサルタントの高橋聖子さんは、国際協力の現場では、GBV(ジェンダーに基づく暴力)を重視しているとして、個人に対するサポートの必要性を訴えた。

「減災と男女共同参画研修推進センター」共同代表の浅野幸子さんは、東日本大震災での性暴力調査の報告を紹介。被害者も加害者も年代は幅広く、DV被害は家族や身内、DV以外でも避難所の住民やリーダー、支援者やボランティアなどの顔見知りからの被害が多いために、なおのこと訴えづらいと指摘した。

具体的には、夫を津波で失った女性が夫の親族から「おまえが死ねばよかったのに」と暴言を受けたケースや、避難所で男性が布団の中に入り込んできて、周りの女性から「仕方ない」と見て見ぬふりされた―などの事例も報告されたが、加害者も被災者ということで警察に被害届を出さなかったという。中には、男性が被害に遭う事例もある。弱者に性別は関係ない。

「被災地でなぜ性暴力が起きやすくなるかというと、瓦礫が増え、街灯がなくなって暗がりが多くなり、避難所やトイレも男女共同。その中で、1ヵ月間揺れ続けて、不安やストレスも増えて、矛先が女性や子どもといった弱いところに向かいやすくなるのです」(中野さん)。

被災地では、まず命を守ることやケガ人への対応などが優先され、それ以外の問題に人員を割くことが難しくなるという背景もある。

メディアの報道も、ライフラインの復興状況に重きが置かれて、被災地で起こる性犯罪などのネガティブな情報が上がりづらくなるという。

「命が助かったのだから」と言われて、命と引き換えに我慢させられる状況が起こりやすくなる。

「平時でも、レイプに遭って警察に届け出る件数は、わずか13%しかない。よく被災地で性暴力って本当に起こっているのか。デマではないかと言われますが、残りの87%は平時でも届けないことを考えると、被災時の状況は容易に想像できます」(中野さん)

なぜ、被害が届けられないのか。

「恐怖の中で硬直してしまって、被害に遭った自分自身が信じられなくなる」

平時でもそんな女性の声がある。だから、被災地ではなおさら、そうしたことを前提に、きちんと暴力への取り組みを進めていくことが必要だ。

「大きな問題」と引き換えに、声なき声を埋もれさせることが、「ひきこもり状態」を生み出すことにもつながる。

中野さんたちは熊本地震後、いち早く声を上げたが、被害をどうやって把握するかということと、被害者がどうやって支援情報に辿り着けるかを今後、しっかり考えていくことが大事になる。

被害者が駆け込める相談先としては、最近、内閣府の「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」(驚いたことに国は一覧表を作っていない。このため、相談したい場合は、各自治体に問い合わせる必要がある)が、熊本を含め、各地に開設されつつある。