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オミクロン株対応ワクチンの接種開始から4ヶ月 明らかになってきた有効性と安全性

忽那賢志感染症専門医
(写真:つのだよしお/アフロ)

日本国内では2022年9月から接種が始まったオミクロン株対応ワクチンですが、接種から4ヶ月が経過し、有効性と安全性に関するデータが蓄積されてきました。

現時点におけるオミクロン株対応ワクチンの有効性・安全性に関するデータをご紹介します。

オミクロン株対応ワクチンとは?

オミクロン株対応ワクチンの作用機序(フィンランド保健福祉研究所の資料より筆者作成)
オミクロン株対応ワクチンの作用機序(フィンランド保健福祉研究所の資料より筆者作成)

オミクロン株対応ワクチンは、野生株とオミクロン株の両方のスパイク蛋白の設計図を持ったmRNAを接種することで、野生株とオミクロン株のそれぞれの鍵に対して免疫を作るワクチンです。

令和5年1月現在、野生株とオミクロン株BA.1の2価ワクチン、そして野生株とオミクロン株BA.5に対応した2価ワクチンが接種可能となっています。

これらは、どちらもオミクロン株のスパイク蛋白を作り出すワクチンですが、BA.1対応ワクチンはBA.1というオミクロン株の亜系統のウイルスのスパイク蛋白を、BA.4/5対応ワクチンはBA.4/5というウイルスのスパイク蛋白を作るという意味で、標的が少し異なります。

BA.1対応ワクチンとBA.4/5対応ワクチンとで有効性に差はない

オミクロン株対応ワクチン追加接種による発症予防効果(厚生労働省 第110回アドバイザリーボード資料より)
オミクロン株対応ワクチン追加接種による発症予防効果(厚生労働省 第110回アドバイザリーボード資料より)

当初、BA.1対応ワクチンとBA.4/5対応ワクチンとで、どちらを接種すれば良いのか迷われた方も多くいらっしゃったのではないでしょうか。

国立感染症研究所が行った、オミクロン株対応ワクチンの発症予防効果を検証した研究の結果が報告されています。

これによると、BA.1対応ワクチンとBA.4/5対応ワクチンとを含めたオミクロン株対応ワクチンの発症予防効果は71%で、個別に見るとBA.1対応ワクチンは73%、BA.4/5対応ワクチンは69%でした。

この研究が行われたのは2022年9月20日から11月30日までですので、日本国内ではBA.5が主流であった時期になります。

BA.5が主流の時期だったにもかかわらず、BA.1対応ワクチンとBA.4/5対応ワクチンの発症予防効果にほとんど差がなかったということから、これらの2種類のオミクロン株対応ワクチンについては、同じオミクロン株に対する発症予防効果は大きな差はないと考えて良さそうです。

また、BQ.1.1やXBBなどの新たなオミクロン株の亜系統に対しても、オミクロン株対応ワクチンの接種によって中和抗体が産生されることが実験室での研究で分かっており、新たなオミクロン株の亜系統に対してもある程度の効果は期待できると考えられます。

最後の接種から時間が経っている人で特に効果が高い

最後に接種した時期ごとにみた従来のmRNAワクチンと比較した相対的発症予防効果(厚生労働省 第110回アドバイザリーボード資料より)
最後に接種した時期ごとにみた従来のmRNAワクチンと比較した相対的発症予防効果(厚生労働省 第110回アドバイザリーボード資料より)

新型コロナワクチンは、最後に接種した日から時間が経てば経つほど、感染や発症を防ぐ効果は低下していくことが知られています。

このため、最後に従来の新型コロナワクチンを接種した日から時間が経っている人ほど、オミクロン株対応ワクチンを接種した際の上乗せ効果(相対的発症予防効果)が高いことが分かっています。

前述の国立感染症研究所の解析でも、最後の接種から3〜6ヶ月の人がオミクロン株対応ワクチンを接種した場合の上乗せ効果が30%だったのに対して、6ヶ月以上経っている人では44%だったと報告されています。

ただし、これは従来のmRNAワクチンの最後の接種から時間が経っていない方がオミクロン株対応ワクチンを接種しても効果が低いということではなく、最後の接種から時間が経っていない方はワクチンによる発症予防効果がそれほど落ちていないためと考えられます。

オミクロン株対応ワクチンの重症化を防ぐ効果は?

オミクロン株対応ワクチン追加接種者と比較した、ワクチン未接種、オミクロン株対応ワクチン未接種の入院リスク(CDC. COVID DATA TRACKERより)
オミクロン株対応ワクチン追加接種者と比較した、ワクチン未接種、オミクロン株対応ワクチン未接種の入院リスク(CDC. COVID DATA TRACKERより)

ワクチンの有効性のもう一つの指標である、重症化予防効果についても海外からデータが報告されてきています。

イスラエルにおける65歳以上の高齢者に対するオミクロン株対応ワクチンの重症化予防効果を検証した研究では、

入院予防効果:81%

死亡予防効果:86%

と報告されています。

アメリカでもBA.5やBQ.1/BQ.1.1が主流だった2022年11月において、オミクロン株対応ワクチンの追加接種をした人と比べて、ワクチン未接種者の入院リスクは16倍、ワクチン接種者(ただしオミクロン株対応ワクチンは未接種)の入院リスクは2.7倍と報告されています。

このように、オミクロン株対応ワクチンを接種することで、新型コロナウイルスに感染した際に重症化するリスクを大幅に低下させることができます。

オミクロン株対応ワクチンの副反応の頻度は?

12歳以上、5−11歳の副反応の頻度(MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2022より)
12歳以上、5−11歳の副反応の頻度(MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2022より)

オミクロン株対応ワクチンの副反応の頻度も明らかになってきました。

米国CDCのVAERSというワクチンの副反応調査システムで、12歳以上5〜11歳の小児の副反応の頻度が報告されています(米国では5〜11歳もオミクロン株対応ワクチンの接種対象となっています)。

これによると、オミクロン株対応ワクチンの副反応の頻度は、従来のmRNAワクチンと同様に、接種部位の痛みや、だるさ、頭痛、筋肉痛、発熱などの副反応がみられるものの、従来のmRNAワクチンを上回る頻度ではないようです。

なお、心筋炎など稀な副反応の頻度についてはまだ分かっていません。日本国内でも現時点ではオミクロン株対応ワクチン接種後に心筋炎・心膜炎と評価された事例はないようです。

オミクロン株対応ワクチンの接種対象者は?

日本国内では、初回接種(1,2回目)が完了した12歳以上の方のうち、最後の接種から3ヶ月以上経っている方がオミクロン株対応ワクチンの接種対象者となっています。

現時点では、追加接種としてオミクロン株対応ワクチンを接種した際のデータしか得られていないため、初回接種としてオミクロン株対応ワクチンを接種することはできません。

有効性や安全性の情報も蓄積してきましたので、これらの情報を踏まえて接種についてご検討ください。

感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp

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