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過去に新型コロナに感染した人は、ワクチンをいつ接種すべきか?

忽那賢志感染症専門医
英国免疫学会、UK-CIC資料より(引用元は記事末尾に記載)

日本ではすでに500万人以上の方が新型コロナに感染しています。

過去に新型コロナになった方も再び感染することがあるため、一般的にワクチン接種が推奨されます。

新型コロナには何度でも感染する 世界では4回感染した人も

新型コロナに感染すると、免疫ができます。

一度新型コロナに感染すると、しばらくの間は感染しにくくなります。

これまでの研究によると、

ということが分かっています。

しかし、長期的に保たれるものではなく、新型コロナに感染したことがある方も再び新型コロナに感染することがあります。

すでに新型コロナの流行が始まって2年以上が経っていますが、2回感染したことがある人は多数いますし、世の中には3回4回と新型コロナに感染した人もいるようです。

過去の感染による再感染予防効果はオミクロン株には不十分

過去の感染による変異株ごとの再感染の予防効果(DOI: 10.1056/NEJMc2200133より筆者作成)
過去の感染による変異株ごとの再感染の予防効果(DOI: 10.1056/NEJMc2200133より筆者作成)

変異株ではワクチンによる感染予防効果が落ちることが知られていますが、過去の感染による免疫も、変異株に対しては再感染を防ぐ効果が落ちることが分かっています。

特にオミクロン株は、過去に感染した人も感染しやすいことが分かっており、イギリスではオミクロン株が主流になってから、感染者の中に占める再感染者の割合が9.3%に達しています。

現在、日本で広がっているオミクロン株はBA.1という系統ですが、これからBA.2という別系統が広がっていくことが懸念されています。

同じオミクロン株であるBA.1に感染した人は、BA.2に対してどれくらい免疫があるのか、についてはまだよく分かっていません。

デンマークからの報告では、過去に新型コロナに感染したことがあり、BA.2にも感染した187人を調査したところ、47人はBA.1に感染した後にBA.2に感染していたとのことです。

この47人は、ワクチン未接種者が多く(89%)、比較的若い世代の人が多かったようです。

新型コロナに感染した人がワクチン接種することで十分な免疫が得られる

過去に新型コロナに感染した人がワクチン接種をした場合としなかった場合の感染累積リスクの違い(DOI: 10.1056/NEJMoa2119497)
過去に新型コロナに感染した人がワクチン接種をした場合としなかった場合の感染累積リスクの違い(DOI: 10.1056/NEJMoa2119497)

過去に感染した人も再び新型コロナに感染することがありますが、ワクチンを接種することで再感染のリスクを下げることができます。

イスラエルからの研究によると、新型コロナに感染した人が、その後に新型コロナワクチンを接種すると再感染するリスクをワクチン未接種者よりも82%減らしました。

ただし、この研究はオミクロン株が広がる前の期間を対象にしていますので、オミクロン株ではこの数値は必ずしも当てはまりません。

イギリスからも同様の報告が発表されており、過去に新型コロナに感染した人がワクチン接種をした場合、ワクチン接種をしていない人と比べて再感染を90%以上減らし、感染後1年以上、ワクチン接種後6ヶ月以上経過しても効果が維持されました。

後遺症の症状がワクチン接種によって改善するかもしれない

新型コロナに感染した人の中には、だるさ、嗅覚・味覚の異常が長く続いたり、脱毛や記憶力の低下などが現れる人がおり、国内では後遺症と呼ばれることが多くなっています。

イギリス保健安全保障庁は、ワクチン接種がこの後遺症の症状の改善に有効かどうかについて、過去の研究について解析を行いました。

この解析では、

・後遺症の症状がワクチン接種によって改善する人が多い

・新型コロナと診断されて4週以内にワクチン接種をすると後遺症が出現しにくい

といった研究について紹介しています。

ただし、この解析の中には、ワクチン接種後に後遺症の症状が悪化した人もいますので、すべての人にとってワクチン接種が後遺症の症状改善に繋がるわけではない点には注意が必要です。

過去に感染した人がワクチン接種をすると副反応の頻度が高い

感染したことのない人とある人との副反応の頻度の違い(DOI: 10.1056/NEJMc2101667)
感染したことのない人とある人との副反応の頻度の違い(DOI: 10.1056/NEJMc2101667)

一方で、副反応については、過去に感染したことがない人よりも局所の疼痛や倦怠感、発熱などの頻度が高くなることが分かっています。

新型コロナワクチンでは、1回目よりも2回目の接種の方が副反応が多いことが知られていますが、過去に感染したことがある人では、感染が初回接種と同じような免疫賦与の機会となり1回目の接種が非感染者にとっての2回目の反応と同様のことが起こるのだと考えると理解しやすいでしょう。

しかし、だからといってワクチン接種をしない方が良いというわけではなく、効果と副反応を理解した上で接種するかどうかご判断ください。

新型コロナに感染した人は、いつワクチンを接種すべきか?

では新型コロナに感染した人がワクチンを接種する場合、いつ接種をすれば良いのでしょうか。

当然ながら、新型コロナに感染したばかりでまだ自宅療養の期間が過ぎていない方はまだ接種ができません。

それ以降は特にいつワクチンを接種しても問題なく、必ずしも一定期間を空ける必要はありません。

厚生労働省は3回目の接種については、感染から3ヶ月(かつ2回目接種から6ヶ月以上)を目安としています。

参考:COVID-19 immunity: Natural infection compared to vaccination

感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp

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