オミクロン株の症例が報告されている国は世界的に増え続けており、2021年12月3日16時時点でオミクロン株の症例が確認された国や地域は日本を含め36カ国になっています。

オミクロン株の現時点での状況と、今後の取るべき対応についてまとめました。

南アフリカ共和国での流行状況は?

南アフリカ共和国における新規感染者数(Worldometerより)
南アフリカ共和国における新規感染者数(Worldometerより)

新型コロナウイルスの新しい変異株である「オミクロン株」は2021年11月11日にボツワナで採取された検体から初めて検出され、その後南アフリカ共和国からも見つかりました。

南アフリカの中でも特にハウテン州という地域で多くの症例が見つかっており、11月12日から20日までの間に検査された77例全てがこのオミクロン株による感染者であることが分かりました。

現在、南アフリカ共和国から新型コロナウイルスのデータベースであるGISAIDには217のオミクロン株が報告されていますが、全ての症例がゲノム解析をされているわけではなく、南アフリカの保健省はすでにハウテン州ではこのオミクロン株が主流になっていると推定しています。

これに合わせて南アフリカ共和国では新規感染者数が急増しており、過去3週間の7日間平均感染者数は、

11月16日:332人

11月23日:1010人

12月1日:4814人

と急上昇しており、12月2日には1日の新規感染者数が11535人にまで増えています。

南アフリカ共和国ハウテン州における第1〜4波までの新規感染者数の推移の比較(https://doi.org/10.1016/S0140-6736(21)02758-6)
南アフリカ共和国ハウテン州における第1〜4波までの新規感染者数の推移の比較(https://doi.org/10.1016/S0140-6736(21)02758-6)

特に南アフリカ共和国でもオミクロン株が広がっているハウテン州では、これまでに3度の流行がありましたが、第4波の流行となる今回は、これまでよりも急速に感染者が増加していることが過去の比較から分かります。

ハウテン州における実効再生産数は、8月中旬から2021年10月下旬までは1を下回っていましたが、11月中旬には2.2にまで急上昇しました。

南アフリカにおける症例の同時急増、実効再生産数の増加、デルタ株からオミクロン株への置き変わりのペースは全て、このオミクロン株がデルタ株よりも著しく高いことを懸念させます。

ただし、

・南アフリカ共和国では全体的な感染者数が少ないことから、オミクロン株による特定のクラスターによって偏りが生じうる

・デルタ株よりも免疫逃避が強いため、ワクチン接種者やデルタ株に感染した人にも感染しうるため感染力が強く見えている

などの要因もある可能性があり、単純にデルタ株と感染力がどちらが強いのかについては現時点では不明です。

現時点ではオミクロン株による重症例は報告されていない

これまでに世界中で報告されているオミクロン株による症例のうち、重症度に関する情報が得られているものでは、約半数は無症状で、残り半数は軽症とのことです。

現時点では、重症化した症例や入院、死亡例は報告されていません。

もちろんまだオミクロン株による感染者は少ないですし、もともと重症化しにくいワクチン接種をした人、若い方、活動性の高い旅行者が中心とのことですので、今後ワクチン非接種者、高齢者にも感染が広がれば重症者が増えてくる可能性はあるでしょう。

南アフリカのデータでは、オミクロン株が拡大しているハウテン州における新型コロナ感染者の入院件数は、

第45週(11月08〜14日):136件

第46週(11月15〜21日):279件

第47週(11月12〜28日):647件

と感染者の数に合わせて増加しています。

ただし、ハウテン州では、前述のように感染者数の増加が過去の流行よりも速い一方で、入院率は過去と同程度であるとのことですので、現時点で明らかに感染者に占める重症者が増えているということはなさそうです。

重症度に関してより正確な情報を得るためには、年齢別、過去の既往の有無、ワクチン接種歴の有無などを含めた長期的な追跡調査が必要となります。

治療への影響は?

オミクロン株は、スパイク蛋白に多数の変異があることから、スパイクを標的としたモノクローナル抗体による抗ウイルス効果が低下する可能性がありますが、現在のところこれに関する実験室や臨床データはありません。

ワクチンの効果低下の懸念は?

オミクロン株は、30を超える変異を持ち、感染成立に関わるスパイク蛋白にも多くの変異があることから、ワクチンの効果を低下させ、再感染のリスクを高める可能性が懸念されています。

実際にこれまでにワクチン接種者でも感染例が報告されていますが、ワクチン接種による感染予防効果は時間とともに低下しますので、この報告だけでオミクロン株のワクチンへの影響を推し量ることはできません。

ワクチン接種者や回復者の血清のオミクロン株や疑似ウイルスに対する中和能力を評価する研究が必要ですが、この結果が得られるまでは数週間はかかるものと思われます。

オミクロン株に対する今後の対策は?

懸念すべき変異株 VOCの特徴の比較(筆者作成)
懸念すべき変異株 VOCの特徴の比較(筆者作成)

すでに日本でも海外(それぞれナミビア、ペルー)で感染したと考えられる事例が2例報告されています。

検疫で適切にオミクロン株が捕捉され、濃厚接触者についても対応がなされていることは評価されるべきことです。

政府は外国人の一時入国禁止という強い措置を取っていますが、オミクロン株の性質が十分に分かっていない現状ではやむを得ない対策かもしれません。

今はできるだけオミクロン株の国内への侵入を遅らせて、ブースター接種を進めることが重要です。

オミクロン株が出現したとしても、私たちにできる感染対策は変わりません。

手洗いや3つの密を避ける、マスクを着用するなどの感染対策をこれまで通りしっかりと続けることが重要です。

ファイザー社モデルナ社は揃ってオミクロン株によるワクチン効果の低下の可能性を強調し、変異株に合わせたワクチンを数ヶ月で製造できると言っていますが、現時点ではそれが日本国内で接種可能になるのは現時点ではいつになるか、そしてオミクロン株が世界中に広がるのかは分かりません。

確かに現在の新型コロナワクチンはオミクロン株に対して感染予防効果は落ちる可能性は高いと考えられますが、これまでの変異株を見ても重症化を防ぐ効果は保たれている可能性が高く、特に高齢者や基礎疾患のある方においてはブースター接種で重症化予防効果を再び高めることが重要です。

今後予定されているブースター接種については、変異株に合わせたワクチンを待つ必要はなく、時期が来ればぜひご検討ください。

ただし、ワクチン接種後もこれまで通りの感染対策は続けるようにしましょう。

手洗い啓発ポスター(羽海野チカ先生作成)
手洗い啓発ポスター(羽海野チカ先生作成)

参考)

1.Department Health Republic of South Africa. COVID-19 Epidemiology Update 2nd December 2021.

2. ECDC. Threat Assessment Brief: Implications of the further emergence and spread of the SARS CoV 2 B.1.1.529 variant of concern (Omicron) for the EU/EEA first update

3. 国立感染症研究所. SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)について(第2報)