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デルタ型に徐々に置き換わり、40代・50代の重症者が増加 東京都の新型コロナの現状

忽那賢志感染症専門医
(写真:ロイター/アフロ)

東京都で4回目の緊急事態宣言が7月12日から発令されました。

徐々にデルタ型変異ウイルスに置き換わり、40代・50代の重症者の割合が増加という傾向がより顕著になってきました。

東京都の新規感染者数は第4波のピークを超えさらに増加

東京都の新規感染者数の推移(Yahoo!JAPAN 新型コロナウイルス感染症まとめ より)
東京都の新規感染者数の推移(Yahoo!JAPAN 新型コロナウイルス感染症まとめ より)

7月17日の東京都の新規感染者数は1410人に達し、これは1週間前の7月10日の950人よりも約1.5倍の増加になっています。

第4波のピークであった5月8日の1121人をすでに上回っており、さらなる増加が懸念される状況です。

デルタ型が2割を超え、アルファ型からの置き換わりが顕著に

東京都におけるL452R(デルタ型)陽性率の推移(第54回東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料より)
東京都におけるL452R(デルタ型)陽性率の推移(第54回東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料より)

東京都ではこれまで主流であったイギリス由来のアルファ型変異ウイルスから、インド由来のデルタ型変異ウイルスへの置き換わりが進んでいます。

アルファ型は従来の新型コロナウイルスよりも感染力が43~90%強いと報告されていましたが、デルタ型変異ウイルスはこのアルファ型と比べてさらに64%感染力が強いとされており、このデルタ型変異ウイルスの占める割合が東京都内で増加すればますます感染者は増加しやすくなります。

若い世代で感染者が増加し、高齢者の割合は引き続き減少

東京都における年代別の新規感染者の推移(第54回東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料より)
東京都における年代別の新規感染者の推移(第54回東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料より)

第3波以降の傾向として、若い世代の割合が増え、60代以上の高齢者の割合は減少傾向が続いています。

第3波までは、職場や飲食店などで活動性の高い若い世代から感染者が増加し、流行が後半になるに従って家庭内・施設内・病院内でのクラスターが発生し徐々に高齢者の割合が増えてくるというパターンでしたが、第4波では後半も高齢者の割合が増加することなく、第5波ではさらに高齢者の占める割合は減少し続けています。

東京都の感染者数に占める高齢者の割合と高齢者接種率の推移(首相官邸7月8日資料より)
東京都の感染者数に占める高齢者の割合と高齢者接種率の推移(首相官邸7月8日資料より)

高齢者の感染者が減少している要因の一つとしては、ワクチン接種の効果が考えられます。

東京都における65歳以上の高齢者のワクチン接種率は、1回目のみが70%、2回完了が40%を超えており、接種率が高くなるに従って「新規感染者のうち65歳以上の割合」が減っています。

東京都における年代別の重症者数の推移(第54回東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料より)
東京都における年代別の重症者数の推移(第54回東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料より)

重症者においても、高齢者が占める割合は減少傾向にあります。

第3波では、重症者の大半を60代以上の高齢者が占めていましたが、第4波、第5波と徐々に高齢者の占める割合が減少しており、現在は重症者の約半数にまで減ってきています。

この傾向についてもワクチンの効果によるものと考えられますが、これまでよりも重症化しやすいとされたアルファ型変異ウイルスよりも、デルタ型変異ウイルスではさらに重症化リスクが高くなるとされており、今後はまだワクチンを接種していない40代、50代といった働き盛りの世代における重症者の増加が懸念されます。

デルタ型変異ウイルスに対してもワクチンの重症化予防効果は保たれていることから、高齢者の次はこれらの40代・50代の世代にいかに速やかにワクチン接種を進めていくかが重要になってきます。

感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp

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