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カタール、シンガポール、米国、ベルギー…… 人口あたりの「現時点での感染者」が多い国

黒井文太郎軍事ジャーナリスト
国際情勢の分析には新型コロナの感染状況を把握する必要がある(「軍事研究」6月号)

各国の感染状況を伝えるデータベース

 筆者は、国際的な安全保障環境の動向を、軍事専門誌などに寄稿しています。その際、各国の防衛政策の動向を分析する前提として、各国の新型コロナウイルス感染症の流行の度合いをある程度、把握したいわけです。そこで当然、各報道を参考にします。

 たとえば、5月16日現在、AFP通信は、WHO(世界保健機関)のデータとAFPが独自に集計したデータから算定した新型コロナウイルスののべ感染者総数を計449万1730人余、死者を30万4619人と報じました。

▽「新型コロナウイルス、現在の感染者・死者数(16日午前4時時点) 死者30.4万人に」AFP 2020年5月16日

 また、同日、NHKは、米ジョンズ・ホプキンス大学の集計データとして、感染者総数は450万476人、死者は30万4631人と報じています。

▽「世界の感染者450万人超える 死者30万4631人 新型コロナ」NHK 2020年5月16日

 このように、新型コロナウイルスの感染状況を報じる際には、のべ感染者総数と死者数で報じるメディアが多いようです。AFPのように独自に集計しているメディアもあれば、NHKのように研究機関の集計を流用しているメディアもあります。

 いずれにせよ、情報のソースとしてよく使われるのは、次の2つがやはり多いようです。

▽WHOのデータベース

「WHO Coronavirus Disease (COVID-19) Dashboard」

▽ジョンズ・ホプキンス大学のデータベース

「COVID-19 Map - Johns Hopkins Coronavirus Resource Center」

人口あたりの死者数

 もちろん他にもいろいろあります。たとえばそのひとつが、人口統計などを提供している「ワールドメーターズ」というサイト内の新型コロナ感染状況のページです。

▽「WORLDOMETERS/COVID-19 Coronavirus Pandemic」

 新型コロナウイルスの感染者数統計に詳しい人にはもちろん周知のサイトでしょうが、このサイトは非常に使いやすくなっています。

項目ごとの国別の順番が一覧になっていて、しかも項目ごとの並べ替えもクリック1つで可能です。とくに、人口あたりの死者数の順番が一目でわかりますので、これは感染の流行を比較するにはたいへん参考になります。

 たとえば5月16日現在、ミニ国家を除いて「人口あたりの死者数」は多い順に以下になっています。

1:ベルギー 773人(人口100万人あたり。以下同)

2:スペイン 587人

3:イタリア 523人

4:イギリス 501人

5:フランス 422人

6:スウェーデン 361人

7:オランダ 329人

8:アイルランド 308人

9:米国 268人

10:スイス 217人――

 ちなみにドイツは96人、イランは82人、ロシアは17人、日本は6人、韓国は5人、中国は3人となっています(※ただし、これはあくまで国全体での死者数をカウントしていることに留意する必要があります)。

現時点で感染している人数

 それと、ひとつ気になるのは、あまり報道では注目されていないのですが、すでに回復した人も多いわけですから、現時点でまさに感染している人は何人いるのか?ということです。これについては、上記のジョンズ・ホプキンス大学のサイトでも集計しているのですが、ワールドメーターズではこれも一覧で見ることができます。以下の順番です。

1:米国 106万8027人

2:ロシア 20万2199人

3:ブラジル 12万359人

4:フランス 9万1529人

5:イタリア 7万2070人

6:スペイン 5万7941人

7:ペルー 5万4956人

8:インド 5万2929人

9:トルコ 3万6269人

10:カナダ 3万2156人――

人口あたりの現時点での感染者数

 ただし、同サイトでは「人口あたりの現時点での感染者数」という項目がありません。そこで計算してみました。すると、以下の順になりました。

1:カタール 8997人(人口100万人あたり。以下同)

2:シンガポール 3357人

3:米国 3229人

4:ベルギー 2709人

5:ポルトガル 2359人

6:バーレーン 2322人

7:クウェート 2141人

8:スウェーデン 2040人

9:ベラルーシ 1986人

10:ペルー 1670人

11:ノルウェー 1469人

12:UAE 1447人

12(同):エクアドル

14:フランス 1403人

15:ロシア 1386人

16:スペイン 1239人

17:イタリア 1192人

18:チリ 1180人

19:カナダ 853人

20:サウジアラビア 778人――

 ちなみに、他の注目国ではイランが213人、ドイツが191人、日本が41人、韓国が18人となっています。中国は、公式発表での現時点での感染者数が極端に少ないので、よくわかりません。

 もちろん人口密度や都市部への集中の度合いなども関係しますし、各国の感染者の把握率も違いますので、このまま単純に感染流行の順番とはならないでしょうが、少なくともこれらの国では、まだ現在も流行中で、きわめて厳しい状況にあるということが言えるかと思います。

軍事ジャーナリスト

1963年、福島県いわき市生まれ。横浜市立大学卒業後、(株)講談社入社。週刊誌編集者を経て退職。フォトジャーナリスト(紛争地域専門)、月刊『軍事研究』特約記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て軍事ジャーナリスト。ニューヨーク、モスクワ、カイロを拠点に海外取材多数。専門分野はインテリジェンス、テロ、国際紛争、日本の安全保障、北朝鮮情勢、中東情勢、サイバー戦、旧軍特務機関など。著書多数。

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