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渋沢栄一の一万円札など新紙幣の原価が物価高によって上昇

久保田博幸金融アナリスト
(提供:イメージマート)

 1万円札など現行の紙幣は2022年夏ごろに製造を終了した。これによってなかなかピン札が手に入らないといったピン札不足が発生していたようである。

 現在は渋沢栄一の肖像画がデザインされた1万円札、津田梅子の5千円札、北里柴三郎の千円札の印刷が行われており、2024年7月をめどに、紙幣のデザインが刷新される予定となっている。

 その新しい紙幣であるが、8日の日本経済新聞に「新紙幣の製造費13%高 原料はネパール産、円安の余波も」という記事が掲載されていた。

 この記事によると、新デザインの紙幣の製造原価は、現在の紙幣よりも13%上がる見通しとなっているとか。

 紙の原料といえばパルプだが、和紙の原材料はコウゾ、ミツマタである。紙幣の製造にはミツマタが使われており、そのうち9割をネパールなどから輸入しているそうである。和紙の原材料を輸入に頼っているというのは知らなかった。

 ミツマタは徳島県や岡山県などで生産されてきたが、農家の減少とともに栽培面積も大幅に縮小したとか。

 ネパール現地のインフレや円安がミツマタの価格に反映され、新紙幣製造コストを押し上げる要因になっているようである。

 紙幣は国立印刷局によって刷られ、日銀が製造費用を払い、印刷局から引き取って発行される仕組みになっている。

 日銀によると、2023年度の「銀行券製造費」は619億円を見込んでいる。計30億3000万枚の紙幣を製造する予定で、原価は1枚当たりで約20.4円になる。現行デザインのみを製造していた2021年度は約18.1円だった。新デザインのほうが原価は13%高くなっている(9日付日本経済新聞)。

 物価高が意外なところにも現れていた。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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