Yahoo!ニュース

なぜこのタイミングでの財務省と金融庁、日銀の3者会合

久保田博幸金融アナリスト
(写真:イメージマート)

 財務省と金融庁、日銀は30日、国際金融資本市場に関する情報交換会合(3者会合)を開いた。外国為替市場で1ドル=140円前後と円安・ドル高水準で推移している円相場の動向について協議したとみられる(30日付日本経済新聞)。

 ドル円が140円台、ユーロ円が150円台に乗せてきたタイミングでの3者会合であったのかもしれないが、意外感もあった。今回の円安が仕掛的な動きには見えなかったためもあるが、少し気が早いようにも見えたためである。

 ただし、欧米の長期金利の動きからみると、なかなか面白いタイミングでもあった。米国債、英国債、ドイツ国債の日足チャートなどから、いったん利回り上昇がピークアウトしてきたタイミングでもあったためである。

 それを狙い澄ましてたとしたら、相場観がすぐれているとの見方もできるかもしれない。そういえば昨年の為替介入のタイミングもなかなか絶妙であった。

 個人的に為替介入を含め、本来、市場にて形成される価格に対し、政府などが介入してもあまり意味はないと思っている。ただし、それが効果的に「みえる」ケースも存在することもたしかである。

 いわゆる逆張りでなく、順張りにて介入を行った際の場合であり、欧米の長期金利がいったんピークアウトしたようなタイミングでの昨年の為替介入もその例となろう。

 介入ではないが、2012年末のアベノミクスと呼ばれた政策も絶好のタイミングで出てきた。欧州の信用不安は後退し、米国株式市場が上昇してきており、リスク回避の円買いポジションが高まっていたことで、輪転機発言がきっかけとなり(主要因ではない)、急速な円高調整と東京株式市場の反発が起きていた。

 今回の3者会合も、欧米の長期金利の動きまで睨んで、そのタイミングを計っていたとすれば、日銀の「工夫」というのも研ぎ澄まされてきたといえるのかもしれない。まあ。工夫などせず、イールドカーブコントロールを撤廃させ、正常化に向けて舵をとるだけで、そんな無駄な工夫など必要はなくなるのであるが。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事