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10月の為替介入は過去最高規模に。これを評価すべきなのか。そもそも為替介入は必要なのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:イメージマート)

 政府・日本銀行が昨年、急激な円安を食い止めるため、円買い・ドル売りの介入の事実を即座に公表しない「覆面介入」を、10月21日と10月24日の2日間実施したことが7日、分かった(7日付読売新聞)。

「外国為替平衡操作の実施状況(令和4年10月~令和4年12月)」財務省 https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/reference/feio/data/quarter/2022_4Q.html

 上記によると米ドル売り日本円買いの介入額は10月21日が5兆6202億円、10月24日が7296億円となった。

 それ以前に、政府・日銀は9月22日に円買いドル売りの介入を行っていた。金額は2兆8382億円で、1日あたりの規模はデータを公表している1991年4月以降の円買い介入で最大となっていた。しかし、10月21日の介入額はその約2倍の金額となった。

 10月21日のニューヨーク時間の朝方にドル円は一時151円94銭まで上昇し、32年ぶり安値を更新した。米10年債利回りが4.33%とほぼ15年ぶりの高水準をつけるなど、米国債利回りの上昇を背景とした円安となっていた。

 ウォールストリートジャーナル紙は21日、12月のFOMCで利上げペースを緩める可能性を巡り、どのようにシグナルを発するべきかを討議する公算が大きいと報じた。これを受けて市場ではFRBの利上げペースが鈍化するのではとの見方も出て、米10年債利回りは反転低下し、4.22%に低下した。

 このタイミングで、大口の円買いドル売り介入が入り、日本時間の21日の夜、ドル円は一時144円台まで下落した。

 この介入については、非常に効果的な介入であったとの評価も出ていた。介入が効果的なのは逆張りではなく順張りの際となる。このときは米長期金利のピークアウト感が強まり、米長期金利が低下したタイミングで大規模な介入を行った。

 ただし、これをみて為替介入は効果的と判断するのは早計と思う。これほどの金額の介入など行わなくても、米長期金利の低下によってやや行き過ぎた円安の修正が時間は掛かっても入る可能性は高かったと思われる。

 2012年後半に出てきた、いわゆるアベノミクスの効果というのも同様であった。日銀の異次元緩和などしなくても、欧州の信用不安の後退によって円高調整が入っていた。リスク回避の反動の動きがはじまっており、米株は上昇してきており、東京株式市場の回復も時間の問題であった。アベノミクスはそのタイミングをやや早めただけであった。

 政府や日銀による市場への介入は、それが逆張り、つまり円安が進んでいる際の円買いドル売り介入などの効果は限られる。それに対して、相場がピークアウトしつつあるところに順張りでの介入は一見、効果があるようにみえる。しかし、単にそのスピードを速める作用しかないとの見方もできる。順張りであれば、別に巨額の資金を使って無理に市場介入などしなくても、自然に相場は落ち着いてくるものである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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