どうして、日銀はイールドカーブ・コントロールを修正したのか。決定会合の中断の理由とは?
23日に12月19、20日に開催された日銀の金融政策決定会合の議事要旨が発表された。このときの会合では、金融市場調節方針の基本的なところは変えずに、長期金利操作の運用のところで、国債買入額を大幅に増額しつつ、長期金利の変動幅を従来の±0.25%程度から±0.50%程度に拡大することとした。
議事要旨では、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について、
「委員は、金融市場調節上の様々な工夫により、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブが形成されているとの認識を共有した」
最初の意見ということもあり、黒田総裁による意見かとみられる。
「ある委員は、本年春先以降、海外金利が急上昇し、わが国の金利にも強い上昇圧力が生じた局面でも、イールドカーブ・コントロールによって金利の低位安定が維持されたとの評価を述べた。この委員は、海外金利の上昇という外生的な要因で国内金利が大きく上昇していた場合には、わが国経済への大きな下押し圧力となっていた可能性があると付け加えた」
金利の低位安定がいじされたというより、無理矢理維持させていた。
「複数の委員は、物価上昇率の実績値や予想インフレ率が上昇する一方、イールドカーブ・コントロールによって名目金利が低位で安定しているため、実質金利の低下を通じ、金融緩和効果は強まっているとの見方を示した」
それならばどうして、イールドカーブ・コントロールを修正したのか。
「多くの委員は、10年ゾーンにおける価格形成に歪みが生じており、年限間の金利の相対関係や現物と先物の裁定といった点で、債券市場の機能度が低下していると指摘した」
この多くの委員が誰であるかは10年後の議事録が出るまでわからないが、すでに歪みが発生したずいぶん経過していたはずが何故このタイミングで「10年ゾーンにおける価格形成に歪みが生じており」などと発言したのか。
「委員は、本年春先以降、海外の金融資本市場のボラティリティが高まり、わが国の債券市場もその影響を強く受けるもとで機能度が低下しているとの認識を共有した」
そうであれば春以降、それをしっかり指摘した上で、現状維持に反対し、修正なりの議案を提示すべきではなかったのか。この会合を含めてどうして全員一致なのかがわからない。
「多くの委員は、市場機能の低下に対応する観点から、イールドカーブ・コントロールの運用を見直し、より円滑なイールドカーブの形成を促すことが考えられるのではないか、との意見を述べた」
「ある委員は、イールドカーブを全体として低位に安定させるべく、全年限で国債購入額を増額したうえで、状況に応じて機動的な買入れを実施することが適当であると述べたうえで、このことは、金融緩和の持続性強化につながるとの見方を示した」
この意見の発信者も気になる。総裁の可能性もあるが、雨宮副総裁の可能性もある。その雨宮副総裁とともに新総裁候補に挙がっている山口広秀・元日銀副総裁(日興リサーチセンター理事長)が、12月20日の会合の前の16日にロイターのインタビューを受け、その内容が19日に伝わっていた。
この記事は読んでいたつもりであったが、再度読み返してみると次のような指摘があった。
ロイター「インタビュー:日本も高インフレ継続、来年はYCC修正も=山口・元日銀副総裁」
https://jp.reuters.com/article/interview-yamaguchi-idJPKBN2T20GJ
「金融政策の修正に臨む場合には、まずはYCCを維持したまま10年金利の扱いを調整することから始まり、その上でなお経済環境が許せば金融緩和から引き締めに転換し、マイナス金利、YCCの順に撤廃するという道筋をたどる可能性があると話した」
「山口氏は、10年金利のコントロール手法の変更について「許容変動幅の拡大か、誘導目標自体をゼロ%程度ではなく例えば0.5%に引き上げ、その水準からの許容範囲を設ける。明示するかどうかはわからないが、やりようはある」と述べた」
この「例えば」がこのインタビューから4日後に日銀によって示されていたのである。これはたまたまであったのであろうか。
さらに今回発表された議事要旨によると、以上の議論を踏まえ、政府からの出席者から、会議の一時中断の申し出があった。議長はこれを承諾した(10時51分中断、11時28分再開)。これは政府に向けて確認したということであろうか。