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米銀で暗号資産(仮想通貨)に絡んだ取り付け騒ぎが発生

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 暗号資産(仮想通貨)業界向け金融サービスを手掛ける米シルバーゲート・キャピタルは、暗号資産交換業者FTXが破綻した影響で取り付け騒ぎが起き、約81億ドル(約1兆円)の引き出しに対応するため、資産の投げ売りを余儀なくされた(5日付ウォール・ストリート・ジャーナル)。

 シルバーゲート・キャピタルはシルバーゲート銀行の持ち株会社子。創設は1988年で、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に株式を上場している。

 シルバーゲート銀行は2013年から仮想通貨関連の事業に注力し、他の銀行が受け付けない仮想通貨関連の事業者に預金口座や決済サービスを提供して急成長した(6日付日本経済新聞)。

 仮想通貨交換業大手FTXトレーディングの経営破綻を機に、同社の取引先でもあったシルバーゲートの経営を不安視する預金者の引き出しが相次いだ。シルバーゲートは暗号資産(仮想通貨)交換業者FTXの複数の部門や渦中のアラメダ・リサーチなどの預金を保有していた。

 仮想通貨に関連する会社や投資家の預金は9月末に119億ドルあったが、12月末に38億ドルとなり、3か月のうちに7割減となった。預金引き出しに対応するため、10~12月期に保有証券52億ドル相当を売却して現金を確保した。コスト抑制のため、従業員全体の4割に相当する約200人の人員削減計画も明らかにした(6日付日本経済新聞)。

 シルバーゲートの株価は5日に一時前日比49%安まで急落していた。

 一部の銀行が暗号資産(仮想通貨)などのデジタル資産に性急に踏み込み過ぎたとの懸念も浮上しており、米規制当局も動きを示した。

 米連邦準備理事会(FRB)と米連邦預金保険公社(FDIC)、米通貨監督庁(OCC)は3日、暗号資産(仮想通貨)が銀行の事業モデルに及ぼすリスクについて警告する初の共同声明を公表した。

 11月に交換業者FTXの経営破綻によって、世界中の顧客が多額の損失に見舞われる恐れがある。連邦規制・監督当局はFTX破綻に伴う金融システム全般への影響は最小限だと主張してきたが、このように銀行の一部に影響が出始めていた。

 日本では米国などに比べて、暗号資産(仮想通貨)はそれほど多く売買されているわけではない。このため、日本で同様の事態が発生することは現状は考えづらい。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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