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核戦争の脅威で米債が一時、動揺か。キューバ危機時の経済や市場はどうであったのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 7日の米10年債利回りはロシアのプーチン大統領の発言を受けて一時13ベーシスポイント下げた(8日付ブルームバーグ、米国市況より)。

 ロシアのプーチン大統領は7日、テレビ中継された大統領府の人権評議会の会合で、世界で核戦争の脅威が高まっていると警告。自国と同盟国を防衛するためには「あらゆる必要な手段」を用いると強調した(8日付ブルームバーグ)。

 7日の米10年債利回りは3.42%と前日の3.53%から大きく低下した。FRBの利上げが米景気を冷やすとの見方から米債が買われたとの指摘があった。しかし、0.1%もの利回り低下であり、何がしかの材料が出てのものとみられ、プーチン大統領の発言を材料視した可能性がある。

 ロシア国内の複数の空軍基地で爆発があり、ロシア国防省はウクライナ軍の無人機による攻撃を受けたと発表した。ロシアによるウクライナ侵攻はあらたな展開を迎えているともいえる。

 世界で核戦争の脅威が高まっているというのは今回が初めてではない。1962年10月のキューバ危機でも同様に核戦争の脅威が高まっていた。

 当時と現在では経済などの情勢は大きく異なり、仮に核戦争の脅威が高まった際に同様の事が起きるとは考えづらい。しかし、あのときは市場や経済はどうなっていたのかについて確認しておくことも必要ではなかろうか。

 1962年といえばいまから60年前であり、この年の2月に東京都の人口が1000万人を突破したり、戦後初の国産旅客機YS11が完成したり、ビートルズがレコードデビューしたりした年である。

 私は4歳であり、かすかな記憶しかない。当然ながら当時の経済情勢や株価の動向など知る由もない。ということで、ここでは日銀のアーカイブに頼りたい。

日本銀行 調査月報:1962年(昭和37年) https://www.boj.or.jp/research/past_release/chosa1962.htm/

 こちらの10月時の状況が記されているのは11月に発表された資料となる。たとえば、「海外経済情勢・概観」では下記のような記述があった。

 「注目されることは、今回のキューバ危機が国際経済に与えた影響が、予想外に軽微にとどまったことである」

 「株価、商品市況、金相場も一時小波乱を起こしたが、間もなく平静に復した。ただその後米国の株価が国防株を中心に、また英国の株価も拡大政策を好感していずれも急騰し、5月の暴落前の水準を回復しているのが目立っている」

 危機が一時的なものとなったこともあるが、市場は比較的冷静に受け止めていた。米長期金利についても4%あたりで落ち着いていたようである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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