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ビットコイン・バブルはどうして起きたのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)は、金融商品とはなりえなかった。それでも巨額の資金が集まっていたこともたしかであり、その結果、暗号資産(仮想通貨)交換業大手、FTXトレーディングの破綻劇を生んだ。これにより、バンクマン・フリード氏は、160億ドルの資産を数日でほぼ全て失ったとされる。

 ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)について、2017年12月に欧州中央銀行(ECB)のコンスタンシオ副総裁(ポルトガル出身)は、17世紀に発生したチューリップバブルに例えていた。

 まさにそれに近い物であったと思うが、チューリップバブルのようなバブルが暗号資産(仮想通貨)で起きていたことも事実であった。

 いったい何故、暗号資産(仮想通貨)のバブル、ここではビットコイン・バブルと呼びたいが、それが起きたのであろうか。

 ビットコインのドルベースのチャートをみると、バブルの発生は2020年10月あたりからとなっていた。

 このあたりにかけて何が起きていたのか。簡単に振り返ってみたい。

 2020年に入り新型のコロナウイルスが世界に拡大していった。3月に米国やドイツなどの長期金利は過去最低水準にまで低下した。FRBは3月15日に臨時のFOMCを開いて政策金利を0.00~0.25%に。量的緩和も復活させた。

 4月にはWTI原油の先物価格が初めてマイナスになる異常事態も発生。8月に米財務省は過去最高となる1120億ドル相当を四半期定例入札で発行すると発表。米5年債利回りが過去最低を更新、ギリシャ10年債利回りが過去最低水準を更新。

 日本の2020年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は戦後最大の落ち込みとなった。それに対して、7~9月期実質GDPは1955年以降で1968年以来の約52年ぶりの大幅な伸びに。

 9月に世界の株式時価総額が8月末時点で89兆ドル強となり、過去最高を更新。FOMCで物価上昇率は2%に到達するまで利上げを見送ると宣言した。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、先進国の中央銀行は金融緩和策を実施。米国などの長期金利は低下した。日本のGDPをみると急低下後、急回復していた。

 米国をはじめ国債も増発されたが、金利は低下し、経済対策も実施されるなどして、資金が大量に市場に流れ込む。ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)にも流れ込むこととなり、バブルが発生した。

 このあたりもう少し具体的な流れを見る必要もあるが、2020年は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、景気などが異常な動きをみせた。これらが結果として、その後の世界的な物価上昇も促した要因のひとつとなったとみられる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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