Yahoo!ニュース

一週間で6月の利付国債発行分の国債を買い入れた日銀

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 6月10日に発表された5月の米国の消費者物価指数が40年ぶりの伸び率を更新し、米10年債利回りは一時3.17%に上昇した。ECB理事会で利上げが示唆され、10日の欧州の国債も総じて大きく売られた。

 13日の超長期債利回りは急騰し、日銀による臨時オペが入った3月末の水準を超えてきた。10年債の指し値オペ対象外の銘柄が0.25%を超えた。そして、後場に入り10年債カレントの366回が0.255%を日本相互証券でつけた。日銀は10年債カレント以外の利回り上昇を受け、残存期間5年超10年以下の利付国債を14日に買い入れると発表。

 13日の米10年債利回りは一時3.44%に上昇。14日の債券先物は1円18銭安の147円32銭まで下落し、中心限月としては2015年7月以来の水準に下落した。日銀は指し値オペと5年超10年以下の国債買い入れをオファーした。ただし金額は8000億円と昨日予告していた5000億円から増額された。日銀は午後1時に臨時で超長期国債買い入れをオファー。10年超25年以下を1000億円。25年超を500億円。そして6月の長期国債の買い入れについて、15日オファー分を追加・増額した。

 14日の米10年債利回りは一時3.49%と2011年4月以来の水準に上昇した。欧州の国債も総じて大きく売られた。日銀は指し値オペ2本と通常の国債買い入れをオファー。指し値オペは新規に先物チーペストの356回を対象としたのである。禁断のチーペストの無制限指し値オペをオファーした。15日の債券先物は大荒れの展開となり、引けは2円1銭安の145円58銭となった。

 15日のFOMCでは、市場の想定通り通常の3倍にあたる0.75%の利上げを決めた。ECBは15日に臨時会合を開催し、南欧などの国債価格急落の抑止策を決めた。これを受けて周辺国主体に欧州の国債が大きく買い戻され、米10年債利回りも3.29%に低下した。

 16日の債券先物は買い戻されたが、カレントとチーペストの指し値オペは続く。17日には10年債カレントは一時、0.265%まで上昇した。

 日銀は6月13日から17日までの一週間で、10年カレントを6兆7060億円、チーペストを7995億円。通常の買い入れを3兆4018億円行った。都合で10兆9073億円の長期国債買い入れを実施した。

 これによって10年カレントと債券先物の流動性が低下するばかりでない。6月の利付国債の発行額の約11兆円に匹敵する規模の国債を買い入れることで、財政ファイナンスとの指摘を受ける可能性すらありうるのである。

日銀による国債買い入れ(単位、億円)

13日、カレント15337

14日、カレント22126 通常9503

15日、カレント5443 チーペスト7212 通常24515

16日、カレント6805 チーペスト533

17日、カレント17349 チーペスト250

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事