Yahoo!ニュース

日銀の2%物価目標達成、正常化は?

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 20日に4月の全国消費者物価指数が発表された。総合指数は前年同月比でプラス2.5%、日銀の物価目標となっている生鮮食品を除く総合指数は前年同月比でプラス2.1%、 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は前年同月比でプラス0.8%となった。

 日銀の物価目標となっている生鮮食品を除く総合指数は、その物価目標の2%を超えてきた。2%超えは消費増税の影響があった2015年3月の2.2%以来、消費税の影響のあった年を除くと2008年10月の2.3%以来となる。

 エネルギー全体で前年同月比19.1%の上昇となり、1981年1月以来41年1か月ぶりの上昇幅となった3月の20.8%の上昇ほどではなかったものの延びに大きく寄与していた。電気代が21.0%上昇と高い伸びとなった。エネルギー品目の上昇分だけで全体の総合指数を1.38ポイント押し上げた。

 ガソリンは15.7%と前月の19.4%の上昇から伸び率が鈍化した。前年同月に伸びていた反動とともに、政府の補助金の影響が出ていたとみられる。

 生鮮食品を除く食料は前年同月比2.6%の上昇となり、3月の2.0%の上昇から上昇幅が拡大した。全体の総合指数を0.58%押し上げた。食料品は4月からは値上げラッシュとなっていた。

 3月までは携帯電話の通信料は、大手各社が2021年春から格安プランを導入した影響で、この下落分だけで総合指数を1.42ポイント押し下げていた。4月からこの分の影響が剥落することで、コアCPIを3月の0.8%から大きく押し上げた格好となった。

 ロシアによるウクライナ侵攻もあり、4月以降もエネルギー価格の上昇や食料品などの値上げの影響は拡大すると予想される。

 なにはともあれ、結果として日銀の物価目標の2%を達成した。しかし、日銀はこれはエネルギー価格や原材料価格の上昇による影響が大きく一時的だとして、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数のほうを重視しているかにみえる。

 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は前年同月比でプラス0.8%と2%には届かないが、いつ日銀は目標を変えたのであろうか。

 世界的な物価上昇の動きは一時的でないとの見方も欧米などでは強まっている。ロシアによるウクライナ侵攻によって、ロシアからの石油や天然ガス、石炭などのエネルギー価格が上昇している。またウクライナは穀倉地帯を抱え、穀物への影響も今後出てくるものと予想される。

 そこにアフターコロナによる経済の正常化の動きが加わることで、エネルギーや原材料価格が高値で維持されることが予想される。

 身近なものの値上げラッシュにともない我々の物価感そのものが変化してくることが予想される。物価高への不安を軽減させるためにも、異次元の緩和を継続すべきかとの疑問は当然出てこよう。

 物価感の変化は賃金上昇などにも影響する期待も出てくるとともに、物価に連動した金利が形成されないことへの不満が出てくる可能性がある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事