Yahoo!ニュース

2022年のキーワードは正常化

久保田博幸金融アナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 2022年のキーワードは「正常化」となると予想される。まず、注目されるのは金融政策の正常化である。

 昨年12月5日のFOMCでは、テーパリングの加速を決めた。減額幅は11月に決めた2倍に拡大し、テーパリングの終了時期は2022年6月から同3月へ前倒しされた。

 パウエル議長は会合後の記者会見において、テーパリング終了から利上げまで、それほど長い時間の遅れはないだろうと述べた。

 FOMCの議事要旨では、ほぼすべての参加者が、最初に利上げした後のある時点で、バランスシートの縮小を始めるのが適切である可能性が高い、との考えに同意したと記されていた。

 市場では3月のテーパリング終了とともに、利上げを開始し、時を待たずにバランスシートの縮小も始めるのではとの観測が強まりつつある。

 イングランド銀行は昨年12月16日のMPCにおいて政策金利を0.15ポイント引き上げ0.25%とすることを決定した。

 欧州中央銀行(ECB)は12月16日の理事会で、コロナ危機で導入した緊急買い取り制度による新規資産購入を2022年3月末で打ち切ると決めた。これも正常化の一歩となろう。

 ラガルド総裁は理事会後の会見で、2022年に利上げをする可能性は極めて低いと言明した。しかし、このECB理事会では、物価の上振れリスクを明確に認めるべきだとの声が理事会メンバーから上がっていた。

 12月のユーロ圏の消費者物価指数は前年比5%の上昇と、統計をさかのぼれる1997年以降で最も高い伸び率となった。ECBも物価上昇による利上げ、つまり正常化に向けて動かざるを得なくなることが予想される。

 オーストラリア準備銀行(中央銀行)は昨年11月2日に3年国債の利回り目標によるイールドカーブ・コントロールを停止している。

 このように物価の予想外の高止まりなどを受け、中央銀行の金融政策の正常化が今後進められることが予想される。日銀もいずれゼロ金利政策への復帰などの正常化に向けて動きを示すことが期待される。

 金融政策の正常化だけでなく、新型コロナウイルスの感染拡大が沈静化する可能性も指摘しておきたい。新型コロナウイルスの完全な撲滅は不可能ながらも、症状の悪化にブレーキが掛かれば、風邪やインフルエンザと同様に扱われることもないとは言えない。そうなれば経済や生活そのものの正常化も期待されよう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事