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FRBは物価高を背景に金融政策の正常化姿勢を鮮明に

久保田博幸金融アナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 パウエルFRB議長は11日に行う上院銀行委員会での指名承認公聴会で、金融当局としてインフレ高進が定着するのを阻止する方針を表明する。また、新型コロナウイルス禍後の経済は前回の拡大局面とは違った様相となるかもしれないと警戒を呼び掛ける。証言テキストが10日に事前に公表された(11日付ブルームバーグ)。

 パウエル議長はその中で、「経済と力強い労働市場を支えるとともに、インフレ高進が定着するのを防ぐため、われわれは手段を活用する」と証言するとされた。

 公聴会は首都ワシントンで午前10時(日本時間12日午前0時)に開始された。

 このなかでパウエル議長は、労働市場は信じられないほど急速に回復していると述べ、他方で物価上昇率は2%の目標をはるかに上回る水準で推移していると指摘。このため、新型コロナウイルス禍に対応するための多様かつ極めて緩和的な政策を経済はもはや必要としていないと強調した。「年内に利上げを始め、おそらく年後半に保有資産の縮小を始めるだろう」と語った(12日付日経新聞)。

 今年11月に中間選挙を控え、議員達はFRBの利上げ阻止に動くというよりも、議員たちは生活費の上昇に敏感であるとされる。このため、インフレ阻止に向けてFRBがどのような対応を取ってくるのかがむしろ関心事項となっている。

 米民主党と共和党の見解が一致することは最近めったにないが、今年の米経済学会年次会合では、エコノミストらが党派を超えて、米連邦準備制度のインフレ対応が後手に回っていると主張した(10日付ブルームバーグ)。

 前回のテーパリングを含めての金融正常化の過程をみると、テーパリング終了から利上げ、利上げからバランスシートの縮小の削減までかなりの時間をおいた。しかし、今回は物価の上昇が想定以上であり、国民生活にも影響が出てきていることで、党派の垣根を越えてインフレ阻止に向かうべきとの意見を背景に、FRBは急ピッチで正常化を進めることが予想される。

 今年3月のFOMCにおいて利上げを開始し、6月、9月、12月と4回の利上げを予想する声が出ている。これは一回あたり0.25%の利上げを予想しているとみられるが、上げ幅を0.5%にする可能性もないとはいえない。

 バランスシートの縮小の削減も年内に開始される可能性がある。ただし、これは売りオペなどをするのではなく、償還分を完全に再び買い入れるのではなく、一部を償還したままとして自然に削減されるようにしてくるものと予想される。

 物価高がこのまま継続するとなれば、イングランド銀行も利上げを続けることが予想され、ECBも利上げに踏み切ることが予想される。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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