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カザフスタンでいったい何が起きているのか。原油価格の上昇やビットコインの価格下落にも影響

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 カザフスタンでは、ソビエトから独立後30年近くにわたって権力を握っていたナザルバエフ前大統領が、大統領の座を2019年にトカエフ氏に譲ってからも影響力を保持し、要職である国家安全保障会議議長にとどまっていた。これに対して、国民の不満が高まっていた。

 さらに燃料価格が大幅に値上がりしたことをきっかけに、政府に対する抗議活動が各地に広がった。トカエフ大統領は内閣の総辞職と、ナザルバエフ前大統領を要職から解任したと発表した。トカエフ大統領自身が安全保障会議議長に就任すると発表した。ナザルバエフ氏が失脚したことになる。

 しかし、それでも反政府デモは全土に拡大し、政府が全土に非常事態を宣言した。最大都市アルマトイでは6日、中心部の広場に集まった数百人のデモ参加者の一部と治安当局との間で衝突も起き、銃声も聞こえたと報じられた。

 現地ではインターネットへのアクセスが制限され、金融機関も業務を停止するなど市民生活にも影響が出ているようだが、実はカザフスタンでの大規模な抗議活動が思わぬところに影響が出ていたのである。

 そのひとつが原油価格への影響である。カザフスタンは石油輸出国機構(OPEC)非加盟国ながら「OPECプラス」のメンバーで、日量160万バレルもの原油を生産している。

 デモを支持する一部の契約業者が原油輸出に利用される鉄道の運行を妨害した影響で、カザフ最大のテンギス油田の生産量が減少したとされ、これがここにきての原油価格上昇の一因となっていた。

 インターネットへのアクセスが制限されたことで思わぬ影響も出ていた。カザフスタンは現在、ビットコインのマイニング(採掘)を禁止した中国に替わり、米国に次ぐ世界第2位のビットコイン採掘の拠点に急成長していたのである。

 5日にカザフスタン全土でインターネットが遮断されたことが影響し、ビットコインのネットワークの計算能力が世界的に急激に落ち込んだ。また、施設が稼働できなくなり、ビットコインの現物売りが出るとの思惑が強まったことが、ここにきてのビットコイン下落の要因ともされていたのである。

 ロシア主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構(CSTO)」の加盟国が相次いでカザフスタンに部隊を派遣。ロシア主導の軍事同盟が2500人程度の平和維持部隊を派遣した。これを受けて抗議活動が落ち着きを取り戻したとも報じられた。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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