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ECBは正常化に向けて一歩進める

久保田博幸金融アナリスト
(写真:PantherMedia/イメージマート)

 9日のECB理事会では、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の購入ペースを10~12月(第4四半期)に減速させることを決定した。

 ECBは第2、3四半期は月額約800億ユーロの購入を続けていた。ロイター通信によると、新たな購入目標は月額600億~700億ユーロに設定されたとか。

 ラガルド総裁は会見で、購入減速について「テーパリングではない」と言明した。「PEPPを向こう3か月について微調整する」という決定だと説明した(10日付ブルームバーグ)。

 ECB理事会では、予想通りというか、ホルツマン・オーストリア中銀総裁が以前に第4四半期に縮小を開始する計画について9月8、9日の理事会で「確実に」討議されると語ったとおりとなった。

 ドイツやオーストリアなどの出身者、いわゆるタカ派と呼ばれる人達はECB内では少数派に属しているため、この発言についてどれほどの信頼性があるのかとの疑問はあった。しかし、「確実に」という表現があり、それによって減額の可能性が意識され、欧州の国債の利回りは上昇基調となっていた。

 ただし、ECBが購入減速を決定した10日の欧州の国債は総じて買い進まれた。ラガルド総裁の「テーパリングではない」との発言を鵜呑みにした訳ではないと思うものの、その発言に秘められた慎重な姿勢とともに、噂で売って事実で買うといった動きが出たものと思われる。

 ECBの今回の決定は、いくらラガルド総裁が「テーパリングではない」と言明しようが、正常化に向けた大きな一歩との見方は出来よう。今後はFRBやイングランド銀行も追随してくるとみられる。どこか取り残されそうなところもあるが。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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