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FRBのテーパリングは年内実施か。27日の米国市場では想定通りと米株、米国債ともに安心買い

久保田博幸金融アナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 ダラス連銀のカプラン総裁は26日、CNBCとのインタビューで、新型コロナウイルスのデルタ変異株感染が急増しているものの、経済には回復力があるとして、9月の次回FOMCで債券購入プログラムの段階的縮小を発表することへの支持に変わりはないと述べた(27日付ブルームバーグ)。

 セントルイス連銀のブラード総裁もCNBCとのインタビューで、「テーパリングに着手する必要がある」とし、米経済は新型コロナウイルスと論じた(26日付ブルームバーグ)。

 市場では、新型コロナウイルスのデルタ変異株感染が急増を受けて、テーパリングの時期を先送りするのではとの一部観測も出ていた。しかし、カプラン総裁とブラード総裁はこのタイミングでそれを否定するようなコメントを出した。

 このタイミングでというのは、27日のワイオミング州ジャクソンホールで開催されるカンザスシティ連銀主催のシンポジウムにおけるパウエルFRB議長の講演を前にしてという意味である。

 パウエル議長は東部時間27日午前10時(日本時間同午後11時)からオンライン形式で講演した。講演のテーマは「経済見通し」。

 露払いという言い方が適切かどうかはわからないものの、カプラン総裁とブラード総裁の発言からは、FRBがテーパリングありきで動きつつあることが想定される。

 実際にパウエル議長は27日の講演で、物価上昇についてこの条件を満たし、雇用も前進していると評価し、年内のテーパリング開始が適当との見解を示した。テーパリングは将来の利上げ時期を直接的に示唆するものではないとも指摘した。

 つまり、今回のパウエル議長の講演では、デルタ変異株感染が急増しているものの、今後の経済回復見通しには変化なく、早ければ9月のFOMCにてテーパリングについて議論することを示した。しかし、利上げについては時間を掛けることも暗に示唆した格好となった。もし9月のFOMCで賛成派が多いとなれば、この会合にてテーパリング実施を決定し、早ければ10月から開始かとの見方もある。

 デルタ変異株感染の急増による経済へ影響だが、昨年4~6月期のような落ち込みが再現されることは考えづらい。個人消費にブレーキが掛かることは予想されるが、それほど大きな落ち込みにはならないことが予想される。これはワクチンへの期待というよりも、コロナ禍であっても経済を回さざるを得ないことが根底にあると思われる。

 27日の米国株式市場は買われ、米債も買い戻された。これは9月のFOMCで議論を開始するといった具体的な発言がなかったためというよりは、ほぼ予想に沿った内容であり、利上げについては少なくともテーパリングが終了後してからとなるため時間を掛けるとの見方からの安心買いであったかと思われる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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