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注目すべきフィリピンにおける船員向けのデジタル決済のマルコペイ、日本企業も絡む

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 25日付けの日本経済新聞に「船員向けデジタル決済 フィリピンのマルコペイが提供」との記事があった。

 フィリピンで電子決済を手掛けるマルコペイが船員向けのデジタル経済圏の構築に乗り出す。給与を電子マネーで支払うほか、銀行などと組んで2021年内に住宅ローンなどの提供を始める。フィリピンは世界で最も船員が多く、約9000億円の資金需要があると見込む。長期間、陸地を離れることで船上に滞留しやすいマネーの需要をデジタルで取り込む(25日付けの日本経済新聞)。

 MarCoPay(マルコペイ社)とは、日本郵船とフィリピンの物流大手トランスナショナル・ダイバーシファイド・グループ(TDG)が共同で設立した会社であり、丸紅も出資している。

 日本郵船のサイトによると、2020年3月に世界で初めて、試験的に洋上で電子通貨を流通させることに成功した後、フィリピンの各省庁から電子通貨による船員への給与支払いについて承認を得て、南アフリカ・ダーバン沖を航海中のLNG(液化天然ガス)運搬船と、日本沿岸を航海中のコンテナ船に乗船しているフィリピン人船員に対し、マルコペイ社が発行した電子通貨で給与の一部が支払われたそうである。

 船舶管理会社から支払われる毎月の給与を、船員がスマートフォンにダウンロードした専用アプリを通じて船上で受け取れる仕組みとなり、自国の家族への送金も簡単にできる。

 これは非常に興味深い。商船の船員は世界で150万人いるが、国別ではフィリピン人が最も多く22万人もいるそうである。

 船員に対しての給与払いは現金支給する商習慣があったため、給与支払いの効率化は長年の課題だった。

 船舶に多額の現金を届けること、およびその現金を船上に保管しておくことが安全上の理由からも大きな課題となり、現金でもらったものを家族に送金する手間なども掛かる。それをデジタル決済にすることで、港まで大金を運ぶ警備保障の費用や、海外送金する手数料が節約できる上、便利さも伴う。このような船員向けデジタル決済は利用者にとって利便性が非常に高いものとなっており、必要性も高いものと思われる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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