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昨年度の税収はコロナ禍にもかかわらず過去最高に、決算剰余金の二分の一は国債の償還に充てるべき

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 財務省は5日、令和2年度の租税及び印紙収入、収入総額が前年度比4.1%増の60兆8216億円だったと発表した。

 法人税や消費税の納税額が昨年12月時点の見積もりを大きく上回り、平成30年度の60兆3564億円を上回って過去最高を更新した。

 税目別では、法人税が前年度比4375億円増の11兆2346億円。昨年12月の見込みの8兆410億円から3兆1936億円増。消費税も前年度比2兆6187億円増の20兆9714億円となった。見込みからは1兆6984億円上振れして過去最高となった。消費税は元年10月の増税の効果が通年で表れたことも税収増に寄与した(5日付産経新聞)。

 昨年度の税収等が過去最高になるのではと事前に報じられていたが、実際にそれが示された。

 内閣府が3月に発表した2020年度のGDPは前年度比4.6%減となり、リーマン・ショック時の2008年度の下げ幅3.6%減を上回り、記録が残る1956年度以降で最悪となっていた。コロナ禍で個人消費が大きく落ち込んだのが要因とされた。

 政府はコロナ禍の影響拡大を受けて、2020年12月に国の2020年度税収が55.1兆円になるとの見通しを示していた。しかし、実際には落ち込むどころか過去最高となっていたのである。

 昨年度のGDPや日銀短観などの経済指標などからみて、ここまで税収がしっかりしていたとは思わなかった。

 リーマン・ショック後の2009年度の税収は38.7兆円まで落ち込み、リーマン・ショックの影響は税収にまで及んでいた。ところが、コロナ禍ではむしろ税収は増加するということになり、状況は大きく違っている。

 この要因として、2019年10月の消費増税の効果があったことも確かであろう。さらに法人税収が想定を超えて推移したことも大きい。米国や中国など景気回復で先行する海外経済を背景に、企業業績はさほど落ち込まなかった。所得税も想定を上回っていた。

 財政法の第六条によると、税収上振れ分を含む決算剰余金の二分の一以上を国債の償還財源に充てることとなる。

 たしかにコロナ対応には必要かもしれないが、今年度予算の予備費4兆円も活用できる。今秋にも実施する衆院解散・総選挙を控え景気刺激策の待望論も強いようだが、昨年度の新規国債の発行額は113兆円規模と過去最大となっていた。

 法人税をみても企業業績そのものがそれほど悪化していない。ワクチン接種によって正常化も意識されることになれば、果たして大型の経済対策が本当に必要なのかとの疑問も残ろう。少なくとも決算剰余金の二分の一は国債の償還に充てるべきである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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