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鉄鉱石価格の下落で米債が買われる

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 中国国務院(政府)は19日の会議で、商品市場の監督強化と物価高騰からの消費者保護を打ち出した(20日付ブルームバーグ)。

 鉄鉱石先物は今月に入って、過去最高の233.75ドルを記録していたが、中国が原料価格の高騰を抑制する取り組みを強化したことから、鉄鉱石先物はアジア時間20日午前に下落し、1トン=200ドルを割り込んだ。

 そして、24日に中国国家発展改革委員会(発改委)は、規制当局が今年の金属価格の大幅な値上がりについて協議したと表明し、工業用金属産業の企業に「通常の市場の秩序」を保つよう求めたと明らかにした(24日付ロイター)。

 これを受けて鉄鉱石先物価格は190ドル近辺に下落していた。

 5月に入り180ドル台にあった鉄鉱石先物価格は急速に上昇し、7日には220ドル台に上昇していた。中国が連休から明け、需要がいっそう増加するとの思惑などによるものとみられた。

 発改委は「今回の価格上昇は、国際的な波及など複数の要因の結果だが、過剰な投機を反映している側面が多い」とコメントしていたが、たしかに5月に入っての動きはやや投機的な動きにもみえた。

 中国政府が投機的な資源価格のつり上げにけん制を強めた結果、5月の急騰前の水準にまで下げてはいたが、ここからはあらためて鉄鉱石の需給を意識した動きになるとみられる。

 24日の中国市場で鉄鉱石相場が急落したことで、24日の米債にはこれが買い要因となっていた。これにより過度なインフレ懸念がやや後退かとの認識によるものであろう。

 しかし中国などでは、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるための封鎖措置が徐々に緩和されており、各国政府の景気刺激策により、鉄鉱石への需要回復は続くと予想される。

 やや投機的な動きは抑えられても、需給バランスによる価格への影響そのものを押さえ込むのは難しいのではなかろうか。今回のインフレ懸念の後退は一時的なものとなるのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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