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感染拡大でリスクオフの動きとワクチン普及期待によるリスクオンの動きが交互に

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 インドのハーシュ・ヴァルダン保健相は3月上旬に、同国の新型コロナウイルスとの闘いは「終盤」を迎えていると言っていた。だが感染者は再び急増し、今や過去最多を更新するほどに状況は悪化した(19日付BBC)。

 インドだけではなく、南米、欧州などでは従来より感染力が強いとされる変異ウイルスの感染拡大が顕著となっている。新規感染者数はブラジルが6万7千人超、トルコが6万2千人超で続く。米ジョンズ・ホプキンス大によると、米東部時間18日午後2時(日本時間19日午前3時)時点で世界の累計感染者数は1億4088万人に上り、死者数は301万人を超えた(19日付日経新聞)。

 日本でも大阪府などを中心に感染の急拡大に歯止めがかからず、医療のひっ迫が深刻さを増している。大阪府はさらに強い対策を講じる必要があるとして、緊急事態宣言の発出を国に要請した。政府は大阪に加え、要請を調整している東京と兵庫を含めた3都府県を対象に緊急事態宣言を出す方向で検討している。

 金融市場では、新型コロナウイルスのワクチン普及による正常化への期待で株式市場では欧米の主要株価指数が過去最高値を更新するなどしていたが、あらためて世界的な感染拡大を受けて、経済回復に対して警戒感が強まった。これにより、リスク回避の動きともなって米株は売られダウ平均は256ドル安となり、米債は買われた。

 しかし、翌日の21日の米国株式市場では、米国のワクチン接種回数は2億回を超えたと伝えられたことで、ワクチンの接種が想定以上の速さで進んでおり、米景気の回復期待からダウ平均は316ドル高と切り返した。

 ワクチン普及による回復期待と感染拡大による景気への懸念の綱引き相場のような状況となりつつある。

 過去のパンデミックからも第二波、第三波、第四波といった感染拡大の波が見受けられる。ワクチン接種ですぐに感染拡大にブレーキが掛かるわけではなく、変異ウイルスの感染拡大などから、むしろ感染者数は増加するなどしている。

 パンデミックはいずれ収まる。しかし、どのタイミングで収まるのかの予想は難しい。ワクチン接種の拡大でブレーキは掛かるとしても、そのワクチンの普及速度や普及率の格差などによって、感染が収まる時期がなかなか見通せない。

 これまではワクチンへの期待感が強かったものの、当面は感染拡大がどの程度となるのかを見極めながら、金融市場ではリスクオフの動きを強める可能性もあるため、リスクオンとリスクオフの相場が交互にくるような、少し荒れた展開も予想される。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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