米長期金利は一時1.6%台に上昇し、金融市場は動揺
25日に米10年債利回りは1.61%に上昇した。東京時間の25日の15時で取引所が引けたあと、米債と日本の国債は同時にじりじりと下落していた。動きが少しおかしいとみていたが、そのときはまさか節目の1.6%台にまで上昇してくるとは思わなかった。24日が1.37%だったことで、0.24%もの上昇となり、昨年3月に乱高下はあったが、それ以降としては一日の値幅として最大ではなかったろうか。日本の10年債利回りも0.150%に上昇していた。四捨五入すると0.2%になるとして0.155%をつけるかどうかも注目されていたようである。
25日の米10年債利回りは結局、1.52%に上昇した。1.61%をつけてからいったん押し目買いが入ったものの、前日比+0.15%の利回り上昇となった。これを受けて欧州の国債も軒並み売られ、フランスの10年債利回りは久しぶりのプラス転換となっていた。
米10年債利回りの上昇に対して、25日以前は米国株式市場では好材料として捉えていたように思われる。新型コロナウイルスのワクチン接種の開始と大型の経済政策の実現によって、景気の正常化への期待が強まり、原油価格の上昇もあって物価上昇期待も強まりつつあった。さらに大型の経済対策による国債増発も米債には重荷となっていたが、米10年債利回りの上昇は米株式市場では景気回復を示すものと認識されていた。さらに長短金利のスプレッドの拡大による収益改善への期待で銀行株が買われるなどしていた。
しかし、25日はあまりの米10年債利回りの上昇ピッチの速さも嫌気されたのか、高PER(株価収益率)銘柄であるハイテク株などを主体に大きく売られ、ダウ平均は559ドル安、ナスダックは478ポイントの下落となっていた。
欧米の長期金利の上昇などからドルやユーロに対して円が下落し、円安も進行していた。
26日の東京株式市場は米株の下落を受けて、日経平均は1000円を超す下げとなった。10年債利回りは0.175%に上昇し、2016年1月に日銀がマイナス金利の導入を決定して以来の高い利回り水準を付けた。3月の日銀による点検で長期金利のレンジを拡大するのではとの思惑も日本の国債利回りの上昇の後押しとなったものとみられる。
その日銀は果たしてどの水準で、国債利回りの上昇にブレーキを掛けてくるのか。0.2%あたりまでの上昇であれば容認するのか。欧米の国債利回りの上昇幅のほうが当然大きくなり、現状、円安となっていることもあり、日銀は無理にブレーキを掛けることも考えづらい。しかし、上昇スピードが速いと何らかのブレーキを掛けてくる可能性はある。
現状、米国の長期金利の上昇は景気回復や物価上昇期待が背景にある。このため、セントルイス地区連銀のブラード総裁は最近の米10債利回り上昇は「妥当な」市場の反応で、これまでのところ「良好な兆候」との認識を示すなどしていた。
しかし、1989年の日本の長期金利の上昇がその後のバブル崩壊を示唆していたように、今回も同様の事態となる可能性もないとはいえない。さらに、国債価格の下落の背景に政府債務の膨張もあり、こちらが材料視されると、いわゆる悪い長期金利の上昇を招く懸念もあり注意は必要か。
日本の10年債利回りは現状は日銀次第の面はあるが、0.2%を上回ってきてもおかしくはない。FRBとしては米10年債利回りがコロナ禍以前の水準にまで戻ることは許容範囲ではなかろうか。そうなるといったん落ち着きを取り戻したあとに再び上昇し、2%を超えてくる可能性も十分にありうる。