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銀行は小口決済のキャッシュレス化の取り組みを進めてから両替の手数料を取るべきではなかったのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 FNNプライムオンラインの記事によると、両替機を使った11~500枚の両替手数料について、すでに三菱UFJ銀行が2018年4月に無料から300円に改定、みずほ銀行は2019年10月から400円と有料化している。そしてこれまでは無料だった三井住友銀行も2月1日から400円の手数料が必要になり、いわゆる3大メガバンクはみな、両替手数料が発生することになった(両替機専用カード使用の場合)。

 三井住友銀行は「お客さまの利便性向上に向けたキャッシュレス化への取組」に伴うものとしているが、お客さまの利便性向上にはならないと思われる。

 日本でもキャッシュレス化そのものは進んでいる。しかし、物を買うときの決済については現金利用が多い。スマホ決済なども出てきてことで、少しずつ現金決済の比率は低下し、1万円札の発行量も減っている。それでも現金決済比率は大きく低下することは考えづらい。

 そのなかにあって、両替手数料が発生することは、特に中小の事業主などにとっては大きな負担とならざるを得ない。三菱UFJ銀行、みずほ銀行に続いて三井住友銀行というシェアの高い3大メガバンクでの両替手数料は大きな負担にならざるを得ない。これが今後地銀などに波及する可能性もないとはいえない。

 この手数料化についても、日銀によるマイナス金利政策などによる銀行の収益性の悪化が大きく影響しているみざるを得ない。銀行は民間企業ではあるが、金融の働きを助ける意味合いからも両替などは無料のままにしておくことはできないのか。たしかに機械を設置し稼働するだけで費用負担は発生するが、しかし、現金利用がゼロにならない限りは商店などでの両替需要はどうしても発生する。

 日本では現金への信用度や利便性の良さ、災害時のこことも考えると、現金決済がすべてスマホ決済などに移行することは考えられない。もちろんスウェーデンのように極端に現金利用が減少する可能性もないとはいえない。スウェーデンでは銀行そのものがキャッシュレス化を主導していた。もし日本でもお客さまの利便性向上に向けたキャッシュレス化への取組を行いたいのであれば、銀行が率先して小口決済に向けてのキャシュレス化を先に取り組むべきではなかったろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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