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日銀の点検の意図は何か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:cap10hk/イメージマート)

 10日にブルームバーグは、日本銀行が3月をめどに結果を公表する金融政策の「点検」で、マイナス金利の深掘りなど一段の緩和余地の存在を明確化するための対応を検討している。事情に詳しい複数の関係者が語ったと伝えた。

 11日に時事通信が、日銀が3月に行う金融政策の「点検」で、現在のマイナス金利政策を維持し、必要に応じて一段の利下げも辞さない方針の明確化を検討することが10日、分かったと伝えている。

 その前の1月16日に時事通信は、金融政策の柱である長期金利操作の運用見直し案が日銀内に浮上していることが15日、分かった。マイナス0.2%からプラス0.2%程度に抑えてきた金利の変動幅を拡大する可能性があると報じた。

 上記の記事は、いずれも勝手な憶測とか一部日銀関係者の個人的な意見などではない。事前に市場の反応をみる、もしくは織り込ませることも目的としてメディアを通じて流されたものとみている。これは別に珍しいことではなく、FRBなどでも同様の手段は講じられている。

 1月16日の時事の記事で、3月会合をめどに金融政策を点検することが示され、特にそれが債券市場参加者の注目ポイントとなった。

 この場合の日銀の点検とは、金融政策の自由度を確保することにあるとみている。それはつまり、より柔軟化させることによって、追加緩和余地を拡げることも念頭にあったということであろう。

 つまり長期金利操作のレンジがもし拡大されれば、プラス方向だけではなくマイナス方向にも拡大される。現状、10年債利回りのマイナス化は現実的ではないものの、追加緩和をしなければならない状況となった際に、市場参加者はあまりやってはほしくないマイナス金利政策の深掘りも可能な状況を整えることも目的であったようである。

 もちろんこのタイミングで、緩和後退を示すわけにはいかない。むしろ緩和余地があることを示したい。しかし、市場参加者はその副作用をみている。そうであれば、副作用の緩和を行う必要があり、それがETFの買入の柔軟化であったり、イールドカーブのスティープ化であったりする。そのための点検である可能性を今回示唆したのではないかと考えられる。

 このように自分なりの解釈を書いているが、実にまどろっこしい気もすることも確かである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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