米雇用統計は悪化したのに再び米株が買われ、米国債は売られたのはどうしてなのか
米労働省が8日に発表した12月の米雇用統計は、非農業雇用者数が前月比14万人の減少となった。雇用者数の伸びがマイナスに転落するのは、新型コロナウイルス危機が深刻になった昨年4月以来となる。市場予想は8万人程度の増加であった。11月分は24.5万人増から33.6万人増、そして10月分も61.0万人増から65.4万人増に上方修正された。失業率は6.7%と横ばい。
これを受けての8日の米国株式市場をみてみると、バイデン新政権が景気支援策を実施する可能性が高まったとの見方から、少なくとも悪材料視はされなかった。新型コロナウイルス感染拡大を原因とした雇用の悪化という結果よりも、雇用の悪化を原因とした追加の財政政策という結果への期待が勝った格好に。
ただし、午後に入り、ダウ平均は250ドルあまり下げる場面があった。これは民主党で中道寄りとして知られるマンチン上院議員が家計への現金給付の増額に反対姿勢を示したと伝わったためである。それは裏返すと景気対策への期待感がそれだけ強いということになろう。
結局、8日の米国株式市場では、ダウ工業株30種平均は続伸となり、前日比56ドル84セント高の31097ドル97セントと過去最高値を更新した。ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数も続伸となり、前日比134.495ポイント高の13201.975と連日で最高値を更新。機関投資家が運用指標とするS&P500種株価指数も4日続伸。20.89ポイント高の3824.68となった。前日に続き、この日も米株の主要3指数がそろって高値を更新した。
株式市場の地合いの良さは継続している。これに対して1%という壁を突破していた米長期金利はさらなる上昇、つまり米国債は売られた。8日の米債は4日続落となり、米10年債利回りは1.11%に上昇した。
米10年債利回りのチャートをみると次の節目は1.2%近辺となる。ここも突破すると1.5%も視野に入る。
米債が売られたのは、追加の財政政策による景気回復への期待、株高によるリスク回避の巻き戻しなども考えられるものの、最大の売り要因は財政拡大による米国政府の債務悪化への懸念、供給過剰による米国債の需給バランスの崩れへの懸念などが嫌気されたものとなろう。つまり米国債についていえば、日本のように無理矢理に長期金利が抑えられているわけではなく、財政への警戒信号も発する機能が維持されているとの見方もできよう。