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2020年の金融市場を振り返る(10~12月)

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

10月

 10月1日に発表された9月の日銀短観では、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)がマイナス27となった。改善は2017年12月以来2年9カ月ぶりとなる。前回、6月の短観ではマイナス34と、リーマン危機後の2009年6月調査以来11年ぶりの低水準になっていたことで、その反動もあり、ここからはやや回復した格好に。

 日本時間2日の13時頃、米国のトランプ大統領が、ツイッターで自らが新型コロナに感染したことを明らかにした。

 東京大学は16日に国立大学として初めて200億円の大学債を発行すると発表。

 イタリアやギリシャの10年債利回りが過去最低を更新。

 国際通貨基金(IMF)は14日公表した報告書で、2020年の世界全体の政府債務が、世界の国内総生産(GDP、約90兆ドル)にほぼ匹敵する規模になると予測した。GDP比で過去最大の98.7%となる。

 欧州連合(EU)は、新型コロナウイルス支援措置の一つの失業リスク緩和緊急支援(SURE)の財源調達に向けた第1弾の債券発行手続きを開始した。発行額は170億ユーロとなる。

 ドイツのメルケル首相は28日、11月2日から1か月間、緊急の部分的なロックダウン(都市封鎖)措置を実施すると発表した。フランスのマクロン大統領も28日に、少なくとも30日から12月1日まで全土で外出を制限すると発表した。

11月

 6日の東京株式市場では日経平均株価は続伸し、2018年10月2日の引け値の24270円を上回り、引け値で1991年11月以来およそ約29年ぶりの高値を更新した。

 米国の製薬大手のファイザーが独ビオンテックと共同開発するコロナワクチンの臨床試験で、9割以上の被験者に感染防止効果がみられたとの初期データを発表した。安全性の検証が終わり次第、11月第3週にも米食品医薬品局(FDA)にワクチンの緊急使用許可を申請する。

 日銀は10日、地方銀行など地域金融機関の経営基盤強化に向けた取り組みを後押しするため、特別制度を導入すると発表した。経営統合で収益力強化に取り組むことなどを条件に、日銀に預けている当座預金に0.1%の金利を上乗せする。2020年度末までの時限措置となる。

 米国大統領選挙では、民主党のバイデン前副大統領が勝利。

 米製薬の新興企業モデルナは16日、新型コロナウイルスのワクチンの最終治験で94.5%の有効性が初期データから得られたと発表した。数週間以内に米食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可を申請する。

 総務省が20日に発表した10月の全国消費者物価指数(除く生鮮)は前年同月比マイナス0.7%となり、2011年3月のマイナス0.7%以来のマイナス幅となった。

 16日に発表された日本の7~9月期の実質国内総生産(GDP)は、前期比で5.0%増、年率換算で21.4%増となった。プラス成長は4四半期ぶり。旧基準も含めた1955年以降で1968年以来の約52年ぶりの大幅な伸びとなった。しかし、4~6月期に記録した戦後最大の年率28.8%の落ち込みから比較して、当時の落ち込みの半分強程度だけ取り戻した格好に。

 欧州各国が相次いで導入する厳格な都市封鎖を行っていた際も、スウェーデンは、厳しい行動規制を課さない独自路線を取っていた。これはスウェーデン方式とも呼ばれ注目されていた。しかし、スウェーデン政府は16日に新型コロナウイルス感染の急拡大を受け、9人以上の公共の集会を24日から禁止すると発表した。厳しい行動規制を課さない独自路線から規制強化へ舵を切った

 24日の米国株式市場でダウ工業株30種平均は初めて3万ドルの大台に乗せて引けた。米国株式市場の代表的な指数であるダウ工業株30種平均は今年2月に過去最高値を更新した。しかし、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて、大きく下落し調整局面となった。ダウ平均は一時18000ドル近くまで下落した。しかし、その後は回復基調となり、ここにきてあらためて過去最高値を更新し、3万ドルの大台に乗せた。

12月

 米国のバイデン前副大統領は、政権発足に向けて、経済政策を担う閣僚らの人事を発表。経済・財政政策の要となる財務長官には、前FRB議長のジャネット・イエレン氏を指名するとした。

 米労働省が4日に発表した11月の雇用統計は、非農業雇用者数が前月比24万5000人増と、市場予想の45万人増程度を大幅に下回った。しかし、これによって追加の経済対策の必要性が増したとの見方が広がり、米国株式市場の代表的な指数であるダウ平均、ナスダック、S&P500種ともに過去最高値を更新した。

 政府は8日午後の臨時閣議で追加経済対策を決定。一般会計からの歳出や財政投融資といった財政支出は40兆円程度に上り、民間支出分も含めた事業規模は73.6兆円ほどに。

 NTTの子会社NTTファイナンスは準備している社債の発行総額を発行登録枠の上限である1兆円で内定したと報じられた。国内で公募される社債の一度の調達額として最大となる。発行予定総額は当初の5000億円程度から段階的に増額された。

 日銀が14日に発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、最も注目される大企業製造業の業況判断指数(DI)はマイナス10と前回の9月調査から17ポイントの上昇となった。

 15日に今年度第三次補正予算が閣議決定された。これにより今年度の国債発行計画も修正された。第三次補正予算に関わる新規財源債(新規国債、赤字国債と建設国債)の発行額は、22兆3950億円も上積みされ、112兆5539億円と過去最大の発行規模となる。

 15日から16日にかけて開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、金融政策については現状維持を決定した。資産買入の期間について、これまでは買い入れ期間を「今後数か月」としか表明してこなかったが、今回は「完全雇用と物価安定の達成が十分に近づくまで購入を続ける」と表明した。つまりガイダンスを変更し、長期にわたり金融緩和の効果を与えること表明。

 11月の全国消費者物価指数(除く生鮮)は前年同月比マイナス0.9%、約10年ぶりのマイナス幅に。

 12月21日に2021年度予算が閣議決定され、それとともに2021年度の国債発行計画も発表された。来年度の予算案は、社会保障費の増加や新型コロナウイルスへの対応などで一般会計の総額で106兆6097億円と、今年度の当初予算を4兆円近く上回り、過去最大となった。新規国債の発行額は11兆円余り多い43兆5970億円となった。歳入全体のうち国債で賄う割合(国債依存度)は40.9%となり(今年度当初は31.7%)、当初予算としては7年ぶりに40%を超えた。

 米上院は21日深夜の本会議採決で、新型コロナウイルス感染拡大の影響に対応する約9000億ドル規模の追加経済対策と1兆4000億ドル規模の2021会計年度(2020年10月~2021年9月)歳出法案を合わせた包括案を賛成多数で可決した。

 英国では、イングランド南東部とウェールズ南部を中心に、新型コロナウイルスの感染急拡大に歯止めがかからず、ジョンソン首相はイングランドで施行中の3段階での警戒制度に、新たに4段階目の「自宅待機」を導入した。20日からロンドン全域、ケント州、ポーツマスなど、イングランド南東部を中心に、多数の自治体に適用。3度目のロックダウンとなる。

 12月29日の東京株式市場では、日経平均は心理的な節目とみられた27000円を突破して、一時27602円52円まで上昇し、1990年8月16日につけた28097円11銭以来の高値をつけた。

 米国株式市場では、S&P500種とダウ平均は過去最高値を更新しての年末の引けとなった。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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