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新聞広告にも鬼滅、鬼滅の刃はコロナ禍の日本経済の救世主となるのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:西村尚己/アフロ)

 大人気漫画『鬼滅の刃』のコミックス最終23巻が12月4日に発売されたことを記念して、4日の全国紙全5紙(読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、産経新聞、日本経済新聞)の朝刊に、主要キャラクター15人が各紙3人、1人1面ずつ名言とともに登場する全面広告が掲載された。

 4日の早朝から全国紙全5紙を買い求める人がコンビニなどに訪れていたそうである。これが新聞の売り上げ増に貢献するとしても限定的だとは思うものの、それよりもこのコロナ禍の景気低迷期にあって、新聞の一面広告を原作者の挨拶ページを含めて4面も出すということによる新聞社の広告収入も大きいと思われる。

 「鬼滅の刃」のコミックス最終となる23巻が4日に発行された。書店に列ができる様子を久しぶりに見たように思う。この初版発行部数は395万部となっている。395万部という数字は大きな数字ではあるが、これでも少なすぎるとの見方がある。実際にフィギュア付きの特別版ではなく、すでに税込み506円の紙の通常版すら予約状態で在庫がない状況との声も聞かれた。395万部は数字そのものに何らかの意味があるのかもしれない。また、これまでの初版発行部数1位は、2012年8月に発売された尾田栄一郎氏の「ONE PIECE」のコミック67巻の405万部という記録を尊重したためとの憶測もあった。とにかく395万部では足りなくなることは確かではないかろうか。

 すでに「鬼滅の刃」のコミックのシリーズ累計発行部数は1億2000万部(電子版含む)を突破している。そして、これを発行している集英社は、興行収入が275億円を突破している映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の3社だけで構成されている製作委員会の一社でもある。映画の興行収益は現在歴代2位だが、歴代1位で308億円を記録した映画『千と千尋の神隠し』を抜くのも時間の問題か。

 漫画『鬼滅の刃』の驚異的な売り上げ、それが原作となった映画からの収益から考えて、今回の全国紙全5紙に全面広告を掲載することは余裕であったかに思われる。広告であり、これによってさらに社会に鬼滅の刃をアピールすることができる。

 11月26日にダイドーグループホールディングスは、2021年1月期の連結純利益が前期に比べて41%増の25億円になりそうだと発表した。従来予想は同72%減の5億円だったが、「鬼滅の刃」のキャラクターをあしらった缶コーヒーが好調で、一転して大幅増益となるそうである(11月26日付日経新聞)。

 すでにこのようなキャラクター商品でも鬼滅効果が着実に現れている。

 ベネッセコーポレーションは12月3日、小学生が選ぶ「憧れの人物」ランキングを発表したが、「鬼滅の刃」の主人公の竈門炭治郎が1位に選ばれた。ベスト10に2位のお母さん、4位の先生、5位のお父さんが入ったものの、それ以外はすべて“鬼滅”キャラクターが並んだそうである。

 12月といえば年末商戦とクリスマス商戦を控えるが、子供達にとって現在、最も流行っているのが「鬼滅の刃」であることがわかる。当然ながらキャラクター商品の売り上げもかなり大きなものになると予想される。個人消費にも少なからず影響しよう。念のため、鬼滅のファン層は子供達だけではなく、かなり幅広い年齢層に受けている。

 鬼滅フィーバーがいつまで続くのかは予想が難しい。最終話が掲載されたコミックスが4日に発売され、コミックの掲載は終了した。しかし、大ヒット中の映画は23巻のうちの7巻から8巻の物語に過ぎず、ここから「鬼滅の刃」はストーリー上、さらに盛り上がりをみせる。それもいずれアニメや映画で映像化されよう。結末はわかっているとはいうものの、やはり「鬼滅の刃」は映像で見たいとのファンも多いはず。

 つまり、「鬼滅の刃」は映画「スターウォーズ」のように続編が常に期待されるコンテンツとなりうる。一時的なフィーバーで終わるのではなく、今後もその熱気は継続されると予想される。しかも「鬼滅の刃」の今回の映画は今後、米国や中国など海外にも配給される予定となっている。「鬼滅の刃」が世界的なヒットとなる可能性もあり、そうなると収益はさらに桁違いなものとなる可能性も秘めている。

 鬼滅効果は日本のGDPに多少なり影響が出るかもしれないとみていたが、日本の主要コンテンツとして大きな存在感を今後、みせてくる可能性が出てきた。これは株式市場にも影響は出てこよう。

 ちなみに集英社は未上場で株を買うことはできない。製作委員会に連なるUfotableは有限会社、そしてアニプレックスはソニー・ミュージックエンタテインメント(SMEJ)の子会社である。映画の配給は東宝とアニプレックスの共同配給とのこと。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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