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日本の技術も使われている、カンボジアの中銀デジタル通貨『バコン』とは

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 カンボジアで中央銀行が発行する中央銀行デジタル通貨システム「バコン」の運用が10月28日に正式に始まったそうである。「バコン」はカンボジアの通貨リエルや米ドルとも連動している。名称は国内の著名な寺院の名前から取ったそうである。

 「バコン」は日本企業の技術を採用したそうである。この開発を進めたのは日本のブロックチェーン企業「ソラミツ」だとか。

 「バコン」の利用者はスマホにアプリを入れると、自分のバコン口座から相手の電話番号やQRコードを使って支払いができる。

 中央銀行デジタル通貨「バコン」は、カンボジア国立銀行(中央銀行)が各銀行にバコンを発行し、各銀行が利用者に展開する「間接発行」方式を採用している。つまり、中央銀行に個人が口座を持つかたちの「直接発行」方式ではない。

 中央銀行が本人確認や口座管理を行う必要がないため負荷が減る。日銀が想定している中央銀行デジタル通貨もこの方式かと思われる。

 カンボジアでは15歳以上の国民のうち8割近くが銀行口座を持っていないが、スマートフォンの普及率は高いことで、スマートフォンを使った通貨システムの普及が進む可能性を意識したものかと思われる。

 中央銀行デジタル通貨システムについては、安全性とともに、いつでもどこでも使える汎用性を有しているのかが大きなポイントとなる、さらにマネーローンダリングなど犯罪に使われないことも前提となろう。

 中央銀行デジタル通貨は、カリブ海の島国バハマで本格的な運用が始まったと報じられた。中国でもデジタル人民元の試験運用を開始し、法定通貨の人民元にデジタル通貨も加える法制度を固めたと報じられた。

 日銀でも現時点で中央銀行デジタル通貨を発行する計画はないとしているが、決済システム全体の安定性と効率性を確保する観点から、今後の様々な環境変化に的確に対応できるよう、しっかり準備しておくとしている。

 このカンボジアやバハマでの中央銀行デジタル通貨の運用は良い事例ともなるのではなかろうか。その結果をみて、本格的に中央銀行デジタル通貨が日本国内で運用可能かどうかの可否を決めれば良いと思う。中国が進めるから早期に導入すべきとの意見には反対したい。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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