難航している米経済対策はまとまるのか
米国の追加の経済対策を巡って、ムニューシン財務長官とペロシ下院議長が協議を継続しており、これが進展するのではとの期待から、1日の米国株式市場でダウ平均は一時、260ドル近く上昇した。しかし、今回の電話会談では、やはり主要部分の見解の相違は埋まらなかったことがわかり、ダウ平均の上げ幅は縮小した。ただし、両者は今後も協議を続けるようである。
民主党は5月に3兆ドル規模の経済対策をとりまとめ、多数を占める下院ですでに可決している。ただ、共和党は5000億~1兆ドルの歳出増にとどめたい考えで、隔たりが大きい。
このため、ペロシ氏ら民主党指導部は歳出規模を圧縮して再提案することで、共和党側に妥協を促した。9月30日に民主党の議会指導部は、2.2兆ドル規模の追加の新型コロナウイルス対策をまとめた。
しかし、共和党が多数派の上院は民主党の求める州・地方政府への資金支援に強く反対するなど、両者の隔たりは大きい。
その後、ムニューシン財務長官とペロシ下院議長が妥協点を探るべく協議を続けている。しかし、大統領選挙を1か月後に控えていることもあり、両者ともに安易な妥協は許さないのではなかろうか。
連邦議会は3月以降、3兆ドルを超す新型コロナ対策を発動したが、中小企業の給与補填策は8月に申込期限が切れ、航空会社向けの雇用維持策も9月30日で失効した。失業給付の積み増しはトランプ政権が大統領令で部分延長したものの、10月中にも資金が枯渇する可能性がある(1日付日経新聞電子版)。
米国経済はコロナ禍からの回復過程にあるものの、上記のように公的支援が相次いで切れることで、これが「財政の崖」と呼ばれる足かせとなっている。その意味では待ったなしの状態といえなくもない。
そもそもこれほど巨額の対策を相次いで打って米国の財政は大丈夫なのかとの疑問も残る。共和党は歳出増を控えたいとしているものの、トランプ大統領からすれば、より規模の大きな対策を望んでいるのではないかと勘ぐってしまう。
いずれにしても、一定規模の経済対策は必要となるが、それをどこに重点を置いて、どの程度の規模とするのか。米中の貿易協議と似たような協議が、共和党と民主党の間で行われている。