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ここにきて新たな債券が次々に登場

久保田博幸金融アナリスト
(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

 ここにきてあらたな形式の債券がいくつか日本で発行予定となっている。そのひとつが「大学債」と呼ばれるものである。東京大学は国内の大学として初となる公募債の発行に向け具体的な準備に入ったと報じられた。

 今年6月に国立大学法人施行令の一部改正が閣議決定され、債券発行で調達した資金を教育研究などの活動に充てられるようになった。これを受けて東京大学は40年債の発行を予定している。条件を10月上旬にも決め、200億円を調達する計画となっている。東大はすでに格付投資情報センター(R&I)から「ダブルAプラス」の格付けを取得した。

 そして、日本の不動産大手のヒューリックが「サステナビリティー・リンク・ボンド」と呼ばれる社債を発行する。期間は10年で、100億円を調達する予定。

 国際資本市場協会(ICMA)は今年6月にサステナビリティー・リンク・ボンドに関する原則を出した。ESG目標と条件変更との関係や、発行後の情報開示、第三者機関の認証など大枠を定めている。

 ESGとは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の要素も考慮したものを指す。

 これまでのESG債と呼ばれるものは、調達した資金の使い道を環境や社会貢献の事業に限定しているのに対し、サステナビリティー・リンク・ボンドは調達した資金を自由に使える一方で、自ら立てた環境目標を達成しないと支払い負担が増える仕組みとなる。

 環境目標連動の「融資」はすでに日本でも行われているようだが、融資に比べて幅広い投資家が参加できる債券のかたちでの発行は世界初となるとか。

 世界初といえば、三菱UFJフィナンシャル・グループは、新型コロナウイルスへの対応を主目的とした社債(コロナ債)を個人向けに発行する。個人向けとなればこれが世界初となるそうである。

 コロナ債とは医療体制の整備や企業の資金繰り支援などを目的に発行されるものである。今回の三菱UFJフィナンシャル・グループが発行する社債は、資金使途を環境や社会貢献の分野に限る「サステナビリティ・ボンド」として発行される。

 期間は10年4か月で、満期が来たら償還する債券と、5年4か月後に三菱UFJフィナンシャル・グループの判断で期限前に償還できる債券の2種類を用意。利率は満期償還で年0.7~1.1%、期限前償還の条項付きでは0.4~0.8%の範囲内を想定している。

 サステナビリティ・ボンドへの関心の高さや、発行体と利率を考えるとたいへん魅力ある個人向けの債券であると思われる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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